サッポロHD 時松常務が社長昇格 ビール社と初の兼務へ 酒類事業に投資加速
サッポロホールディングスは18日、社長交代の人事を決めた。代表取締役社長として3月から新たにグループを率いるのは、常務グループ執行役員でポッカサッポロフード&ビバレッジ社長の時松浩氏。サッポロビールの社長も兼務する。中核の酒類事業をはじめ、激変する環境にどう立ち向かうのか。 持株会社体制への移行後、グループのトップが事業会社の社長を兼務するのは初めて。 「酒類事業を中心に、一体となって今後の力強い成長戦略を実行するため、いちばん望ましい組織体制を検討した」。 18日の会見で、時松氏に後任を託す現社長の尾賀真城氏が説明した。自身は代表権のない特別顧問に就く。 「身の引き締まる思い」と語る次期社長の時松氏。サッポロビール、サッポロ不動産開発、ポッカサッポロと、グループの主要事業を経験してきた。「酒類、不動産、食品・飲料の3事業すべてと直面してきたのは私しかいない」と自負する。 酒類事業に関しては、サッポロビールの会長に就任する現社長・野瀬裕之氏からバトンを引き継ぐ。「酒類をコア事業と位置づけ、食品・飲料とのシナジー創出、不動産への外部資本投入のプロセスも開始。そこから得られるキャッシュを酒類に振り向ける」との方針だ。 3回にわたるビール類酒税改正が完了する26年にかけ、業界ではビールへのマーケティング傾注が加速する。 「当社は他社に比べて(ビール類の販売に占める)ビールの構成比が高い。全体のシェアでは4番目だが、26年の酒税改正でビールのウェートがさらに高まることは目に見えており、そのなかで競争を確立できれば決して4番目の地位に甘んじていることにはならない。ビールの価値をしっかり上げていくことが責務だ」として、ビール市場でのシェア奪取に向けて意気込みを示した。 「ずっとビール会社でやっていた人が不動産の社長をやれといわれても務まらないが、時松は務まる。素養を持っているうえに、勉強する行動力がある」と評する尾賀社長。ともに長く経営に携わってきた時松氏も「(尾賀氏と)違う立場でみても課題感には近しいものがあり、お互い共通の理解のもと進めてきた」と信頼関係を語った。 なお今回の人事にともない、時松氏はポッカサッポロの社長を退任。後任に就く同社常務の佐藤雅志氏が、サッポログループ食品社長、サッポロHD常務グループ執行役員を兼務する。 ◇ ◇ 〈略歴〉時松 浩(ときまつ・ひろし)氏=1984年慶応大商学部卒。江崎グリコを経て、91年にサッポロビール入社。営業企画部長、執行役員スピリッツ戦略部長、取締役常務執行役員営業本部長などを歴任し、19年3月にサッポロ不動産開発社長兼サッポロHD常務グループ執行役員に就任。23年1月から現職。大分県出身、62歳。