『単身花日』“初恋を殺す”不倫旅行の結末 重岡大毅演じる舜の“マヌケさ”が物語の光に?
「初恋を殺すためには、その相手とセックスすることだ」 鳥貝(前原瑞樹)の意味が分からない助言を真に受ける舜(重岡大毅)、あまりにもピュアすぎやしないだろうか。人を疑うことを知らないというか、なんというか……。もはやホラーな言動を繰り返す花(新木優子)のことも、天真爛漫だと解釈している舜。さすがに誰か「目を覚ませ!」と叱ってやってほしい。 【写真】同じ布団に入り重岡大毅に寄り添う新木優子 『単身花日』(テレビ朝日系)第7話で描かれたのは、“初恋を殺す”という名目の不倫旅行。この旅行で舜は花とセックスをして、あいまいな関係にケリをつけようとしていた。鳥貝が余計なことを言ったせいで……。正直、妻のゆり子(高梨臨)の立場になって考えてみたら、たまったもんじゃない。 たいていの不倫ドラマは、いつの間にか“不倫している側”に感情移入をしていて、よくはないと思いつつも結ばれることを願ってしまうものだが、本作の舜と花にはまったく感情移入ができない。呑気にパンケーキを食べていたり、海辺でいいムードになっている2人を見ては、「おいおい、お前らなにしてんねん!」とツッコミを入れてしまう。むしろ、これこそが、『単身花日』の楽しみ方とも言える。 それにしても、花が舜に執着している理由は、やはり父性を感じているからなのだろうか。旅行の前に、ゆり子に「一晩だけ、桜木くんにパパになってもらいます。許して、ゆり子ママ」とメッセージを送っていたことや、舜にキスをされても「やっぱり、しなきゃダメ? 桜木くんの胸で、ゆっくり眠りたい」とあくまでプラトニックな関係を求めていたことを加味すると、花の舜に対しての気持ちは“恋”ではないとも考えられる。
男としての包容力を感じさせる笑顔が印象的だった舜(重岡大毅)
だが、旅行を終えて帰るときに、「バカだね、桜木くん。わたしなんか、やっちゃえばよかったのに」とつぶやいたということは、花にも“そういう気”はあったのだろうか。ミステリアスな花の手中に、まんまとハマっていく舜。これまでの舜は、花の前で少年のような表情を見せることが多かったが、旅先の宿では、男としての包容力を感じさせる笑顔が印象的だった。 たとえるならば、『これは経費で落ちません!』(NHK総合)の山田太陽や、『知らなくていいコト』(日本テレビ系)の野中春樹(闇堕ち前)を演じていたときに、重岡大毅が見せていた愛おしい人だけに向ける特別な笑顔。この笑顔を見た瞬間に、「舜は花に完落ちしてしまったのだな……」と悟ってしまった。 しかし、花は確実に“なにか”を隠している。おそらく、その“なにか”を共有しているのが、片山(田中樹)なのだろう。舜とそっくりな花の夫・健一は、今どこにいるのか。花が「あの人が、もうすぐ帰ってくる。わたしを殺しに」と言っていたということは、まもなく航海から戻ってくるのだろうか。それとも……。花が屋上から飛び降りようとしていた理由も含めて、まだまだベールに包まれている部分は多い『単身花日』。わりとダークなものを背負っている登場人物たちのなかで、舜のマヌケさがある意味で物語の光となってくれているような気がする。
菜本かな