【優雅なバスタイムを】地球にも、あなたにも。エルメスがもっとやさしくなりました【ル バン エルメス】
ちからが欲しいとき。自分へのささやかなご褒美が、私にはあります。それは、お風呂でエルメスの「ルバーブ」を使うこと。正式名は「オー ドゥ ルバーブ エカルラット」という香りで、直訳すると「緋色のルバーブの水」。 【写真】バス空間が一気に優雅に。画像をもっと見る スカーレット色の、ルビーのような情熱的な色のパワーも目に美しいけれど、その馥郁とした甘いルバーブの香りのオーラが、素晴らしい。大好きです。 談合坂のインターチェンジで時々、ルバーブを購入します。切り刻んだルバーブをコトコト煮込んでジャムを作る、甘酸っぱくてやさしい記憶が、真紅のボトルには詰まっているんです。狭い浴室いっぱいに広がる甘やかなルバーブ。心の澱が流れていくのを実感します。 ここぞというときだけ、ちびちびと使いながらも、いつかは空になるボトル。名残惜しい気持ちでさよならしていましたがこのたび、リサイクルガラス製の容器に「お着換え」しました。 《オー ドゥ ルバーブ エカルラット》は、エルメスの調香師、クリスティーヌ・ナジェルにとって特別な香りでもあります。というのも伝説的な先代、ジャン=クロード・エレナとともに作り上げたオー デ コロンが、このルバーブなんですよ。 ナジェルがエルメスに迎えられたのは2014年、ちょうど10年前のこと。それから2年間、彼女はエレナ氏とともにエルメスでの香りの創作に携わりました。それまでも目覚ましいキャリアを築き上げてきたプロフェッショナルが、前任者とそこまで長い時間を費やして「引継ぎ」を行うなんて。就任時にインタビューする機会に恵まれた私は、彼女に聞きました。この2年間は、どういう意味があったのか、と。 答えは明快でした。然るべき時間をかけてものごとを手渡すその姿勢こそが、エルメスの美学なのだと彼女は教えてくれたのです。 「長年働いてきた人へ、また物語や歴史への敬意というものが、エルメスにはあるのです。エルメスに迎えられて、エルメスならではの時間の概念を知ったことが、私にとっての大きな贈り物だと感じました」 「時間をかけるということこそがエルメスの素晴らしさのひとつ。2年という期間は、決して誰かから課されたものではありません。私たち2人のクリエーターにとって必要な、自然に生まれた時間でした。ジャン=クロードの仕事を間近で見て、私自身もこれでスタートできると思えるタイミングがその時でしたし、彼にとっても、自分が少しずつ退く準備ができるタイミングだったと思います」 円形のソープは、カレのように美しいパッケージデザインも眼福。 ふたりの天才が手に手を取り合い、濃厚な「移行期」に作り出した贈り物が、甘く、まろやかな酸味が駆け抜けるやさしいルバーブなのです。 自分自身と向き合い、労りながら、緊張を溶かすバスタイム。ガラスの美しいフラコンを愛でながら、詰め替えつつ長く付き合うことで、新しい時間の概念が見えてきそうです。 リサイクルガラスの容器へと進化する視座に、メゾンの自然への敬意が垣間見れますね。ほかにオードランジュ ヴェルト、オー ドゥ シトロン ノワールの香りにて、ルバーブと同様に、ヘア&ボディ シャワージェルと、ハンド&ボディ クレンジングジェルのレフィル版を展開予定(発売時期未定)。 「用の美」とも言うべき機能性と、オブジェとしての完成度、そして環境への配慮。声高に謳い上げることなく、ごく自然なジェスチャーとして歩を進めるエルメスの姿勢。素敵だと思うのです。 ◇エディターIGARASHI