岩谷翔吾、小説デビュー作は「横浜流星の背中を押したかった」 2人で作り上げた意味とは
THE RAMPAGEの岩谷翔吾が、小説家デビュー作『選択』(幻冬舎)を10月にリリースした。本をテーマに自身のコラム連載で作家と対談するなど小説好きとしても知られる岩谷が、高校の同級生で俳優の横浜流星の原案をもとに、約4年かけて執筆した同作。パフォーマーと俳優という異なるジャンルの第一線で活躍する2人は、今なぜ本作を生み出そうと思ったのか。親友だという2人が、ORICON NEWSの取材に応じた。<全2回の前編> 【アザーカット】めっちゃ笑顔…仲の良さが伝わってくる岩谷翔吾、横浜流星 ――横浜さんが原案を担当し、岩谷さんが執筆とのことですが、本作を2人で作り上げることの意味をどのように見いだしていらっしゃいますか? 【横浜】まず、同級生でこうやって作品を生み出すということ。年齢もまだ20代ですけど、自分らが生み出すことによってそれを下の世代にも届けられるし、自分たちが動くことが1番大事だと思っています。 【岩谷】本当に流星の言った通りですね。「ビジネスで意気投合してやりましょう」っていうのは全くなく、本当に日常の延長線っていうか、友人のノリとして「なんかこれやったら面白いよね」とか、「なんかこういうシーンあったらいいかもね」みたいな感じです。何げない会話の蓄積から生まれた作品なので、「絶対これでかましてやろう」みたいな下心のある野望はまったくなくて。自分たちの友情だったり、長年の絆の構築という感じですね。 ――友情、絆からクリエイティブな発想につながっていくことが素晴らしいですね。 【岩谷】流星がお世話になっている藤井道人監督のBABEL LABEL(バベルレーベル)も、同級生が集まって、「なんか面白い作品を届けたいね」という形から始まったと聞きます。なんか感覚としてはすごく近いというか。だからそういうビジネスでみたいなものでは全くないので、いい意味で自分たちがやりたいようにできたなと思っています。 ――異なるジャンルの第一線で活躍されているお二人ですが、それぞれがエンタメ作品で積み上げてきたものは、本作にどのように生かされていますか? 【横浜】僕は少なからず藤井監督の影響が強いと思います。なので藤井作品が好きな人は、きっと『選択』は好きだと思います。無意識にそうなっている気がします。自分も経験を重ねてきて、「こういう作品があったらいいな」など考えることが多くて。翔吾も、小説に挑戦していたタイミングだったので、そこがグッとハマったっていう感じです。 【岩谷】僕はこの『選択』を書くにあたって、流星の過去作品をもう一回見直したんですけど、やっぱすごくて。10年ぐらい一緒にいますけど、僕の知っている“横浜流星”ではなく、生々しい役柄としてしか見られないんです。改めてもうすごい役者だなと思います。書くにあたって、例えば『ヴィレッジ』(2023年/藤井道人監督)のシーンを想像して書いたり、『青の帰り道』(18年/同監督)の時の、威勢のいい感じみたいなとか。『選択』は、あてがきではないんだけど、流星からエッセンスもらったみたいな感じで。これ流星にも言ってないんですが、書く時に、流星からもらったFCの流星のボードをパソコンの前に置いて、困った時に、「亮(=『選択』の主人公)はどう動くかな」と、流星のボード見て「こっちかな」みたいな(笑)。作品としてどう動くか、一つの判断材料にしてました。 ――お話を伺っていると、お二人の信頼関係の強さを感じますね。 【岩谷】僕は(横浜流星を)より知れたし、なんかより絆が深まったなと思いました。この作品は、読者に伝えたかったとか、世の中に発信したかったっていうのもあるんですけど、僕は結構、“流星の背中を押したかった”というのもあって。 ――背中を押したかった? 【岩谷】やっぱりこういう仕事をしていると、登り詰めれば詰めるほど孤独が降り注ぐ世界ではあるんです。作中の一部分に、文章的に前後の流れからちょっと“浮くな”ってところがあるんです。でも、そこは浮いてもいいから流星に伝えたかった。自分はより流星に対して尊敬も増しましたし、好き度も上がりました(笑)。 ――横浜さんはいかがですか? 【横浜】リスペクトが高まったと思います。やっぱり自分にはできないことなので。 自分も日々“選択”を重ねて今があると思っていて、そういうのも全て重ねて、翔吾にも話したりしていたんです。自分が文章を書けたら、自分で書くんですけど、それはできない。彼には文章力がある、そのセンスがある。それを最初から感じていましたし、実際に都度原稿を送ってくれて、「こんな表現は自分やっぱりできないな」とか。 ――お互いの長所を生かして、作品を作り上げていく。 【横浜】もちろん感情の部分はやっぱり自分の方がたぶん、ある(わかっている)と思うんですけど、情景だったりとか、そういうものはやっぱり毎回原稿が来るたびにブラッシュアップされてるので、「おお、やるな」とか「よく見てんな」とか。じゃあ自分がそこに、それぞれの心情だったり、言葉だったり、そういうものでプラスの力になれればなと思っていました。今、ドラマを撮影していて、説明とか言葉の量を多くしないと見てくださる方々に伝わらないと思うんですけど、『選択』ではそれを結構排除したんです。よりリアルにさせたかった。本当に「この世界で生きてる人々」にさせたかった。だからそこは結構意見言いましたけど、それを何ひとつ嫌な顔せず、修正してくれて感謝してます。 ――岩谷さんは、横浜さんの意見はどう受け止めていたのですか? 【岩谷】「確かにな」と思いました。例えば「俺はこうしたいんだよね」と文章で書いたとしても、日常会話のなかで「俺は」とはあまり言わない。(主語なしで)「こうしたいんだよね」っていいますよね。文章のリズム的に、主語があって…というのが普通なので、無意識で書いてたんです。でも、(横浜の指摘には)“引き算の美学”がありましたし、(横浜は)そのセンスが半端ないなと、めっちゃ勉強になりました。それにしても、二人とも仕事が早いんだよね。いつ寝てるんだろうってたぶんお互い思ってました(笑)。 ■『選択』(幻冬舎) 著/岩谷翔吾 原案/横浜流星 【あらすじ】 「もう、うんざりだ。殺す。絶対殺してやる」。包丁を忍ばせ、家を飛び出し、亮は走っていた。母にひどい仕打ちをした、父親を探しあて殺害しに行くために。息も絶え絶えに走っていた。そしてこれまでの世の中の不条理を憎んだ。しかしその途中、亮は歩道橋から身投げしようとしていた中学生を助ける。それは幼なじみの匡平だった。やがて、どんよりした巨大な社会に飲み込まれていく二人の少年。十数年後、行き場を失った亮は、ずるずると特殊詐欺実行犯グループに身を置くことになる。