巨人が仕掛けた5人内野シフトの是非
巨人が奇策に打って出た。7月11日、東京ドームで行われた巨人ー阪神戦。2-2で迎えた6回、ゴメス、マートンの連続タイムリーで2点を勝ち越された原監督は、先発の大竹をあきらめ、福留、今成と、左が並ぶ打順で変則左腕の青木にスイッチした。福留を打ち取ったが、なおも一死二、三塁と続くピンチで、原監督は、両手で外野手まで呼び寄せるジェスチャーをしながらマウンドに向かった。プロの試合中に9人が全員マウンドに集まる構図は、なかなか、お目にかかれないシーンだ。 “これ以上、1点もやれない”がベンチの判断だった。原監督は、内野の守備もできるユーティリティプレーヤーのレフト、亀井に一、二塁間を守らせ、外野2人、内野5人の変則守備隊形をとった。メジャーで全盛になっているシフトディフェンスの一種である。しかし、阪神ベンチは、今成に代え、スイッチヒッターの西岡を代打に送る。すると、再び巨人は亀井に指示。亀井は右往左往しながらレフトの定位置へ戻った。だが、西岡のカウントが2-2となったところで、また巨人ベンチが動く。 今度は、亀井を三遊間にポジショニングさせ、三塁ランナーを絶対に返さないという内野5人で前進守備隊形を取った。外野はセンターを空けて2人体制。三塁走者がゴメスだから、西岡に引っ張らせれば、内野ゴロに封じ込めると考えたのだろう。 だが、シフトディフェンスを成功させるためには、投手との連携が絶対条件になってくる。元阪神のスコアラーである三宅博氏も、「引っ張らせることが前提のシフトなのだから、スコアラーが“ゴロゾーン”と呼ぶ膝下の低目、しかもインサイドを攻めねばならなかった」というが、結果、青木の投球は、甘く中へ入って、西岡はセンターへライナー性の打球を打ち返した。外野が定位置ならば、間違いなくセンターフライだった打球は、勝負を決定づける2点タイムリー二塁打に変わってしまった。 ギャンブルは完全に裏目に出た。長期離脱となる怪我を負った因縁の東京ドームで殊勲打を放った西岡も、「変わったシフトだと思ったが、気にせず無心で振った。おそらく打球を詰まらせようと考えているんだなとも考えたので、それは頭に入れていた」と、その場面を振り返った。