「本当に効くのか?」…クスリの「費用対効果」をめぐって政府と製薬メーカーの大バトルがはじまった!その背景にある医療界の「重大問題」
世界の「いいクスリ」が日本人は使えない
――いま政府で「クスリの費用対効果評価」を強化するという動きがあります。なぜ、いまこうした議論が始まったのでしょうか。 国民皆保険のおかげで、日本では誰もが医療にアクセスできるわけですが、クスリの「費用対効果」を検討して保険に組み込む、あるいは、保険適用されているクスリの費用対効果を検証して保険から外すという機能が、イギリスやフランスなどの先進国と比べて弱かったのです。 日本はクスリと認められたら、ほぼ自動的に保険で利用できるようになるわけですが、じつはここに落とし穴がある。保険財政を圧迫してしまうという問題です。 このままでは、いずれ諸外国で使われている画期的な新薬が高額過ぎて、保険適用されないということも起こりえるかもしれませんね。 現状では、保険財政を配慮して薬価を低く抑えようとしているが、これでは製薬メーカーは開発のモチベーションをなくしてしまう。 ただでさえ、クスリの開発は長期にわたり、高額のコストが必要ですからね。このため、画期的な新薬を作った海外の製薬メーカーは、日本での販売を後回しにするという傾向がある。そのために、海外と比べて日本では画期的な新薬が行きわたらないドラック・ロスやドラック・ラグが生じてしまうのです。 (印南一路氏談 後編につづく) ここまで印南氏に聞いてきたように、費用対効果の評価を強化したい政府の方針には、保険医療の財源問題やより効果的なクスリへのアクセスができるようにしようという考え方があるわけだ。 では、日本の医療にまつわる制度は、今どうなっているのか。なぜ、効果のないクスリが広がってしまっているのか。後編「効果のないクスリを日本人は飲まされている…?政府と製薬メーカーの対立のウラにある「日本で“いいクスリ”が手に入らない」深刻な事情」で、さらに印南氏の話を聞いていこう。
マネー現代編集部