根岸季衣、名だたる監督に呼ばれたのは「本当に財産です」 黒澤明監督の現場ではリチャード・ギアとも共演「一番日本人ぽかった」
黒澤明監督から「食べっぷりがいいね」
1991年、黒澤明監督の映画『八月の狂詩曲(ラプソディー)』に出演。この作品の舞台は長崎のとある片田舎。かつて原爆を体験した鉦おばあちゃん(村瀬幸子)の家に夏休みを過ごすため、4人の孫たちがやって来る。田舎での生活に最初は退屈していた4人だったが、長崎に残る原爆ゆかりの場所を実際に目にし、祖母の昔話を聞くうちに戦争に対する考えを深めていく…。 根岸さんは、鉦おばあちゃんの娘・良江役を演じた。鉦おばあちゃんの兄で、ハワイで農園を営む錫二郎の息子クラーク役でリチャード・ギアが出演していることも話題を集めた。クラークは不治の病にかかった錫二郎の「死ぬ前に鉦と会いたい」という願いを叶えるべく、おばあちゃんをハワイに連れて行くために日本へやって来る。 ――黒澤明監督の撮影現場はいかがでした? 「すごく楽しかったです。黒澤監督もそれまでの武将ものを撮っているときはピリピリしていたし、人数も多くて大変だったみたいですけど、私が出た『八月の狂詩曲』と『夢』は2作品ともすごくアットホームな感じだったんですよね。 食事も各技術の方とか大体10人ぐらいでいつも行っていて。役者で言うと井川(比佐志)さんと私、『夢』のときには寺尾(聰)さんがいらしたぐらいのすごく小規模な食事会で、大体1回の食事で3時間。食べながら飲みながら、監督がいろんな話をしてくださって。 毎日ちゃんと書いておけば良かったなって思いますよ。おもしろい話ばかりだったんですけど、聞くのが楽しいから書いておくなんて頭が回らなくて。本当にただ楽しくて、飲んで食べていましたね。 黒澤監督に『根岸くんは食べっぷりがいいね』なんて言われて『そうですか』って調子に乗って食べて飲んでいたら、どんどん太っちゃって(笑)。でも、すごくすばらしい時間でした」 ――リチャード・ギアさんとの共演はいかがでした? 「彼とも3回ぐらい少人数で食事に行きましたけど、一番日本人ぽかったですよね。淡泊だし、『蕎麦屋に行こう』とか言って。それで、蕎麦屋に行って『納豆ないですか?』って聞いたり、ひじきを頼んだりするからおもしろかったです。 ハーフの役だから、彼なりに役を作ってそうやっていたというのもあるんでしょうけど。ラストのシュートが終わったときに『アイアムアメリカン!』って言って、いきなり本来のリチャード・ギアに戻っていました(笑)。自分を抑えていたんでしょうね。やっぱりカッコ良かったですね」 そうそうたる監督たちとタッグを組んできた根岸さん。大林宣彦監督の遺作の『海辺の映画館-キネマの玉手箱』にも出演。2024年は『変な家』(石川淳一監督)、映画『湖の女たち』(大森立嗣監督)が公開された。 次回は現在出演中のミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』、少女の霊と闘うパワフルなおばあちゃんを演じて話題の映画『サユリ』(白石晃士監督)の撮影エピソードなども紹介。(津島令子) ヘアメイク:熊田美和子 スタイリスト:渋谷美喜