10日午後にノーベル賞授与、92歳被団協田中さん「力振り絞る」世界が認めた伝える覚悟
【オスロ=木下倫太朗】ノーベル平和賞の授賞式が、10日午後1時(日本時間同午後9時)からノルウェーのオスロで開かれる。世界に被爆の実相と核廃絶を訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員が登壇し、メダルや賞状が授与される。式で演説する田中熙巳(てるみ)さん(92)が9日、オスロで記者会見し「最大限の力を振り絞り、核兵器は人類と共存させてはならないと伝えたい」と決意を示した。 「核のタブーを作ってきた活動に感謝する」。ノーベル賞委員会のフリードネス委員長による被爆者への敬意を表する発言で始まった会見。田中さんは「運動の成果が、世界の人たちにも認められることになった」と改めて受賞を喜んだ。 会見では海外メディアからの質問も相次いだ。地元ノルウェーの記者から防衛のために核を必要と主張する国へのメッセージを求められると、「国民の命や財産は核では絶対に守れない。核による抑止力は存立しえない」と力強く訴えた。 被団協の事務局長を2度にわたり計20年務めるなど、長年にわたり核兵器の廃絶を訴え続けてきた田中さん。亡くなった先輩たちを思い「あと10年早ければ喜びを共有できた」と悔しがる場面もあった。自らも今年で92歳となったことを踏まえ「私たちはいつかいなくなる」とし、核兵器の恐ろしさを身をもって体験した被爆者だからこそ、「そう長くない人生の中で最大限の力を振り絞り、核兵器は人類と共存させてはならないと若い人たちに伝えていきたい」と決意を新たにした。 授賞式の後、10日夜には晩餐(ばんさん)会も催される。田中さんらは11日、ノルウェーのストーレ首相らと面会する。