純血統のイベリコ豚はわずか2%だった!プロに聞いた「本場の生ハム」の真実
それとスペイン料理店などで一本の足からスライスして出すお店がありますよね。
このときにひづめを見るのも面白いですよ。ハモン・セラーノは白豚が使われますから、ひづめが白ければハモン・セラーノ、黒ければハモン・イベリコってことです。
熟成期間よりも「血統や個体差」が味を決める
――ところで、よく生ハムに「○カ月熟成」って書いてありますが、熟成期間が長い方がやっぱりおいしいんですか? 基本的に若いものは獣臭さがあります。スペインのハモン・セラーノは7カ月熟成から24カ月熟成までさまざまで、熟成の長いものはレセルバやグランレセルバとランク分けされています。 一方、ハモン・イベリコは最低24カ月熟成する必要があります。長すぎても短すぎてもダメなんです。 さらに言うと、熟成期間よりも、血統や育ってきた環境、どのように輸送されてきたかが味を左右すると思っていいでしょう。スペインでは多くの生ハムが分業制なので、例えば今年おいしいと思った会社の生ハムが、次の年には全然違う味になっていたというのはよくあるんですね。
その差を小さくするために、スペインで飼育から生ハムづくりまでを自社で一貫して行っている会社は5社ぐらい。ちなみに、「Black Tag」を作っているBEHER社もその一社です。
プロが伝授するおいしい生ハムの見分け方
――生ハム界のマニュファクチュールなんですね。ところで、カットの仕方でおいしさは変わるのでしょうか? これは全然違います。厚みがあると塩味を感じやすく、薄いほど口の中で脂が溶け、旨みをより感じることができます。スペインではコルタドールと呼ばれる公式認定資格まであるほど、職人の技が求められる作業なんですよ。
――パックされたもので、おいしい生ハムの見分け方はありますか? 生ハムの表面を見ると白い粒が付いているものがあります。これはチロシンというアミノ酸の一種なので、白い粒が出ているものはポテンシャルの良い状態で熟成されたものという証です。
――白い粒って塩だと思っていましたが、おいしさの証なんですね。生ハムって想像以上に奥深いですね。いろいろと食べて試してみたいと思います! ◇ 身近にありながらも、知らないことも多かった生ハム。酒の席で生ハムのウンチクを披露してみてはいかがだろうか。 吉澤健太=写真 林田順子=取材・文
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