【遺品整理】死後4年…遺志を尊重する片付け方法は?63歳女性の相談に住職の名取芳彦さんが回答
50代からの女性のための人生相談・185
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は63歳女性の「義母が生前作った趣味の作品の処分が進まない…遺志に背かない、いい処分方法を知りたい」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取さんが回答します。
63歳女性「義母が大切にしていた物」についての相談
義母が亡くなって、もう4年という歳月が経ちました。しかし、義母の家が片付きません。義母は多趣味で墨絵や人形飾りなどを作ったり、和洋裁を楽しんでいました。それらの大小さまざまな作品が、今でもたくさん残っています。 以前、義母に「あなたはすぐに物を捨てる」と言われたことがあり「作品などを捨てるのは、義母の遺志に背くことになるのではないか……」と思って、なかなか片付けを進められません。 それでも少しずつ作品を捨てたり、譲ったりしているのですが、まだまだたくさん残っています。特に墨絵の作品は大きく、処分も譲ることもできずにいます。 義母の家の片付けのことを考えるだけで疲れてしまいます。故人の遺志に背かずに、作品を片付ける方法があればいいのですが……。 (63歳女性・お気楽さん)
名取さんの回答:方法は2つ!「戒名」があるか、ないかで変わる
“故人の遺志に背かず”が難題ですね。でも、大丈夫です。 お義母様が戒名をもらっている場合と、そうでない場合について、今回は徹底して坊主の立場でお答えしていきます。 もし、お義母様が戒名をもらっているなら、仏教徒になったということです。仏教徒は、いつでも、どんなことがあっても、心穏やかな人になることを目指します。 ですから、お義母様は心穏やかになるのを邪魔する“執着(しゅうじゃく)”から離れる教えを学び、その道理を納得しているはずです。 ※執着(しゅうじゃく):物事に固着して離れないこと。忘れずにいつも心に深く思うこと。とらわれ。 執着は心を縛り自由を奪います。執着しているものを失うのが嫌なので、それが怖くて心は穏やかにはなれません。 お義母様が残した物は、書いたり、作ったりした時点で、本人の思いは完結しているでしょう。 仏教徒であれば、それがその後、どうなろうと大した問題ではないはずなのですが、記念品として保存しておきたくなるのは人情でしょう。しかし、その記念品も本人がこの世の役割分担を終えれば、記念品としての役目を終えます。 ですから、お義母様が仏教徒になっているなら、作品を処分しても何の差し障りもありません。あとは、遺族が故人の思い出代わりの形見として一つもらっておけば、それでいいでしょう。 仏教徒になったお義母様は今頃「死ぬ前は誰かが大切に保管してくれると期待していたけど、それは私のワガママだって気付いたわ。何か(穏やかな心)を得るには、別の何か(執着)を捨てるのが一番の方法だってわかったの」と笑っていると思います。