寺山修司と親交の詩人・佐々木英明さん(青森・平内町在住) 旧ツイッターで自伝的詩集を配信
青森県平内町在住の詩人、佐々木英明さん(76)が手がけた詩集「方言詩 ソネット その他の詩」をX(旧ツイッター)で配信している。「言葉が降りてきた」という小学5年生から現在に至るまでを、全123編の詩と、日記、エッセー、写真で構成。佐々木さんの人生をたどる“自伝”のようでもある。「読み終わった後に煙のようになくなる詩集もいいんじゃないかと思って」。紡いできた無数の言葉は、どこまでもまっすぐでてらいのない輝きを放つ。 「書くことよりも発表することに抵抗がある」と語る。詩壇などに属さず、1人で創作を続けてきた。これまで詩集を2冊刊行。だが「詩を売り物にしたくない」との思いが揺るぎないものとなり、別の形を模索。10年以上前から新作ができるたびXで発表してきた。今回選んだ作品は、これまでの詩集やX上の作品から選んだ。Xで佐々木さんをフォローしている人、フォローしてくれた人の中で希望者がいれば無料で送信している。 『ひとつぶの』 ひとつぶひとつぶの雨より ひと降りの雨のさびしさ 雨の去った野はらにて はるかな地平をみはるかす ひとりひとりの人間より ひと塊りの人間のさびしさ 10歳で詩を書き始め、青森高校時代に寺山修司に雑誌の文芸欄で認められる。「寺山さんは『詩の師匠』。言葉の使い方というより、詩人としてのありようで影響を受けた。個人であり続けること。そして『ノーが全体で、イエスはその部分』という考え方」 「えいめい、何か書いたらもってこいと寺山さんはいつも言ってくれた」と佐々木さん。「だけど、あのころは寺山さんが喜ぶような詩を書いていたんだよな」。1987年、母が病に倒れ、熟慮の末に住んでいた埼玉から故郷・平内に戻る。「そして、寺山さんと一切“決別”しようと思った」 前衛的じゃなくていい。今、ここに見えているものを書く。それは自分を書くということ-。夏は午前2時、冬は同4時に起床。自宅周辺の海、山の中を2時間ほど歩く。心拍数が徐々に上がる。ふと足が止まる。ゴロゴロした石みたいなものが喉に突っかかったように呼吸が苦しくなる。「これ何だ」。疑問が文章に発展していく。完成したら真っ先に思い浮かぶのはほかでもない、寺山なのだという。「あんなに逃れたいと思っているのにね」 「青森とか津軽とかそういう区分で世界を捉えると窮屈に感じる。それを野原、山、海という観点で見ていくと広さが生まれる」と佐々木さん。「ずっとここに住んでいるから分かることがある。平内から見える海の言葉、山の言葉、その変化を言葉にしていきたい」 佐々木さんのXのアカウント名は「晴れたり曇ったり」、IDは「kominato_nikki」