オイルフィラーキャップもオイル吹きの原因だった! でも「やっぱり一度バラしてしっかり組み直さないと…」【週刊チンクエチェントVol.37】
フィラーキャップは目視しても触ってみても、どこが問題なのかがわからない
スティルベーシックに到着してエンジンフードを開け放つと、内部に付着してるオイルはさらに色濃くなっていた。平井社長が、教えてもらったとおりに僕が巻き付けたオイルフィラーキャップのアルミホイルを外し、内側をチェックする。 「ああ、やっぱりここも原因のひとつですね。ほら、アルミホイルの内側にオイルがついてるでしょ?」 たしかに。アルミホイルでカバーしていた以上、外側から飛んできてオイルが付着するなんてことはあり得ない。となるとフィラーキャップ周りに何か問題があるとしか考えられないのだけど、目視しても触ってみても、どこが問題なのかがわからない。 が、平井社長に教えてもらったところによると、フィラーキャップの裏側にはエンジン本体側に向かって伸びるステムがあって、蓋の部分とは溶接で繋ぎ合わされている。その部分に目に見えない微細な孔もしくは亀裂が入っていて、エンジンの負荷が高まったときにミクロの霧状になってオイルが噴き出すのだろう、ということ。ひとまず液体パッキン+アルミテープで塞ぎ、内側のゴムパッキンを入れ替える応急処置を施してくれることになった。 「目視じゃわからないところが多くてほかにも原因があるだろうから、完全に止まるということはないだろうけど、あやしそうなところは増し締めしたりしておきますよ」 その言葉に送り出されるようにして、僕は代車として貸していただいたアバルト500で愛知県某所に向かい、いつかやらなきゃと考えてたタスクを暗くなった頃にようやくクリアし、ホテルにチェックインした。やっぱり静岡に戻って“しぞーかおでん”にするべきだったかと考えながら、手羽先屋さんに入って一杯やりつつ、やっぱり今夜は手羽先で正解だった! と感涙する。マジで美味い。 で、翌日の昼頃に再びスティルベーシックに到着すると、オイルフィラーキャップは綺麗に噴き出し防止策が施されていて、あやしげなところをしっかりチェックもしてもらい、いつだって神戸に向かって走り出せる状態になっていた。感謝! これで少なくとも原因のひとつは潰せたわけだ。 「でも、間違いなくほかからも噴いてますからね。着く頃にはエンジンルームは今までと同じ感じになってるんじゃないかな。最終的には一度バラしてしっかり組み直さないと……ですよ」 弩シロートながら勝手にあれこれ調べてみたところ、ガスケット類はもちろんのこと、様々な箇所のナット類、チューブ類、ゴム類などなど、まぁチンクエチェントに限らず旧いクルマの場合にはオイルが滲んだり噴いたりする箇所がたくさんあるようだ。さすがにそのすべてを短時間でチェックしてもらうのは不可能だし、オイル量のチェックだけしっかりやっておけば、大事に至ることはなさそう。なにせ、走ればパフォーマンス的には──チンクエチェントなりに速くて──絶好調なのだ。 そういえばチンクエチェント博物館の深津館長も、ゴブジ号が2回目に立ち往生したとき、つまり高速道路でオイルシールが破損して安全に停められる場所まで僕が走り続けてしまったこともあって、“とりあえず様子を見ながら乗っててもらって、いつかどこかのタイミングでちゃんとオーバーホールしましょう”といっていた。けれど、走ってると笑っちゃうくらい絶好調なので、いつがその“いつかどこかのタイミング”なのかを計りかねてたりもする。 “いつかって、いつだよ……?”なんて漠然と考えながら神戸のおふくろ宅に向かったのだけど、やっぱり──チンクエチェントなりにだけど──速いし滑らかだし、走りそのものは気持ちいい。絶好調なのが怖い、なんて思えてきたりもした。 暗くなり、おふくろの住む街に最も近いサービスエリアで、本日最後のエンジンルーム内とオイル量のチェックをする。やっぱりチェックするたびにエンジンルームは黒いオイル汚れが色濃くなっている。まぁ、それは平井社長の予言どおり。 んじゃ、オイル量はどうだろ? 減ってるかな? とレベルゲージを抜いてウエスで拭いて、また刺してチェックする。 ……ウソだろ? もう一度チェックしてみる。 ……ウソだろ? マジか? いやいや、これはいったいどういうことなんだ? 新たな問題発生なんだとは思うけど、何がどうなってるのか判然とせず軽く混乱したから、僕は何もなかったフリをして、とりあえずそこから10分ぐらいのところにあるおふくろ宅に走って行くことにした。