「最初は綾波レイ役を受けた」宮村優子 収入が厳しくて始めた声優業で「アスカ役」に大抜擢され変わり出した人生
■「いまやファッション誌にも登場」アニメはメジャーな存在に ── 長年声優として活躍されていますが、アニメを取り巻く状況は変わったと思いますか?
宮村さん:本当に変わったと思います。私が子どものころは「アニメが好き」とは、あんまりおおっぴらに言えなかった時代。別に悪いことをしているわけではないのに「オタクっぽい」とちょっと色眼鏡で見られがちでした。それがいまではこんなにアニメがメジャーになって。いろんなところとコラボしているし、ファッション誌の表紙をアニメキャラが飾るのも当たり前になってきました。長年、声優として活動しているなかで、アニメがこんなに注目されているのがすごく嬉しいと同時に、いまだに不思議な感じがしています。
── 講師として後進の育成もされているそうですね。声優をめざす後輩たちにはどう育ってほしいと思いますか? 宮村さん:私が新人だったころは、「強い精神と気合さえあれば何事も乗り越えられる」みたいな根性論が一般的でした。すごく厳しい課題を与えられて、それを克服してこそ一人前みたいな感じで。そういう根性論は必要ないと思います。大事なことは、みずからの個性を大切にし、自由にのびのびと演じることかなと。でも、それは意外と難しいのかもしれません。多くの人は、成長するうちに「自分らしさ」を表現するのが苦手になっていく印象を受けます。
もし「声優になりたい、演じるのが好き」と思うのなら、「好き」という気持ちを大切にしてもらいたいです。もちろん基礎の勉強は大事ですが、お手本やマニュアルにとらわれすぎるのではなく「自分だったらこの役やセリフをどう表現するだろう?」と、ゼロから作り上げる部分に力を入れてほしいです。それがキャラクターに命を吹きこむことになる気がします。 PROFILE 宮村優子さん みやむら・ゆうこ。声優。兵庫県神戸市出身。1994年、『勇者警察ジェイデッカー』のレジーナ・アルジーン役で声優デビューを果たし、1995年に放送が始まった『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレー役で大ブレイクする。『名探偵コナン』の遠山和葉役も担当。2009年からオーストラリアに移住。2016年に帰国後、声優として第一線で活躍しながら、講師として後進の育成にも務める。2児の母。
取材・文/齋田多恵 写真提供/宮村優子
齋田 多恵