Beyond GDP NPOが創造する新しい経済社会
現在、「ステークホルダー資本主義」をはじめ、新しい経済社会への移行が起きている。そんな経済社会の変化の渦中で、その役割を更新しながら社会問題解決、社会変革に挑んでいるNPOたちがいる。 2024年10月4日、経済同友会は、新公益連盟、インパクトスタートアップ協会とともに「第3回共助資本主義マルチセクター・ダイアローグ」を開催した。3回目となる今回、大企業、NPO、スタートアップの経営層430人が一堂に介し、国内外のさまざまな社会課題を解決することを目的とした対話が行われた。「共助資本主義」とは、経済同友会代表幹事・新浪剛史の発案で23年から掲げている「日本経済が活力を取り戻し、持続的成長を実現するモデル」だ。企業が社会課題の解決に向けて「共助」の取り組みに参画し、新たな需要やイノベーションの創出とウェルビーイングを実現する経済社会を提唱している。 この「共助資本主義」の概念を体現する事例も生まれはじめているという。24年1月の能登半島地震の災害対応において、インパクトスタートアップのWOTAが開発したポータブル水再生システム「WOTA BOX」のシャワーキットを、災害支援を行うNPO法人ピースウィンズ・ジャパンが被災地で活用。この動きを大企業が金銭面・人材面からバックアップしたという災害対応における共助の事例だ。ほかにも、NPO法人フローレンスが主導する「こども体験格差解消プラットフォーム」、NPO法人WELgeeが主導する「難民人材プラットフォーム」、NPO法人クロスフィールズが主催する企業幹部がNPOに参画する「ボードマッチプログラム」をはじめ、協働の取り組みが立ちあがりはじめている。 ■「Beyond(ビヨンド)GDP」という議題 気候変動、貧困問題、格差、不平等、分断、高齢化──。地球規模の課題、社会課題は多様化し、複雑化している。そして、「厄介な問題(Wicked Problem)」と呼ばれるように、問題が複雑で多くの要因が絡み合い、その要因同士が相互に影響し合うことで、論理的に問題を定義し、「これで終わり」という問題解決策を見つけることが難しい。だからこそ、解決の糸口を見つけるためには、複合的な課題を横断する「つながり」の構築が重要になるだろう。今後、こうしたセクター横断のマルチステークホルダーの協働は不可欠になる。特に、政府や市場の外側にある「声が聞かれない声」に耳を傾け、問題を発見し定義し発信するNPOはその先導役として、より重要な役割を担うだろう。