超スローボールに詰まった大竹耕太郎の「投球哲学」 投げる時は“なんとなく”を大事に「リリースするまで決めていない時もある」
■ 次に、超スローボールはどういうシチュエーションで投げるのだろうか。自分のなかで余裕がある時に投げるものなのか? 「余裕があるから投げられる、という順序立てが従来だったんですけど、『それを投げるから余裕が生まれる』順序立てでもいいかなって思い始めました。だから、余裕がない時こそああいうのを投げる。遊び、あくまで球遊びっていう感覚。よく聞かれるんですけど、大して考えて投げてないですよね。そんな深いこと考えてないし、リリースするまで投げるか決めていない時もある」 これでは、相手もなかなか反応できないものだ。自分だってギリギリまで投げるか決めていないのだから。 「なんとなく投げる、“なんとなく”を大事にします。なので、具体的な理由とかじゃなくて、なんか『今だ』っていうのを。そういうセンサーみたいなのは大事にしたいですよね。やっぱり動物なので、対戦相手も自分も」 ■ バッテリーを組む坂本誠志郎からは冗談混じりに「(捕球するまでに)瞬き3回したわ」と言われるそう。投手陣では村上頌樹や岩崎優が時折スローボールを投げている。 「結構投げる人増えましたよね。村上とはいつもそういう話をしています。他チームだと山崎伊織(巨人)が投げてますよね」 それでも、投手にとって遅い球を投げるのは勇気がいるものだ。現代は特に投球のパフォーマンスを上げ、球速を上げていくことに注力する者が多い。 「そこが多分人とズレてるんでしょうね、僕は。沖縄キャンプとかでバッティング練習するんですけど、速いマシンを打つ方が飛ぶじゃないですか。打撃投手の人にフワッと投げてもらった球って、マジで外野を超えないんですよ。(遅い球は)自分が打っても飛ばないって分かるから、むしろ速く投げる方が怖いです」 ここでも大竹のユニークさが際立つ。そして、納得する答えを持っている。 「平均的にみんなよりちょっといいぐらいだったら試合で投げられないし、長くできない。これは負けないみたいなのがそれぞれあるから、多分1軍で投げてると思う。スローボールも感覚でやってるので、投げない理由は特に見つからないかな」 2025年も超スローボールで魅了する姿を楽しみにしたい。 [取材・構成:尾張はじめ]