兵士が訓練、妖怪遭遇も 地域のランドマーク「盃山」 連載”まちの世間遺産”/兵庫・丹波篠山市
当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波篠山市岡野地区にある「盃山(さかずきやま)」です。 「盃山の朝風に♪」―。丹波篠山市立岡野小学校の校歌冒頭に登場する「盃山」。岡野地区のランドマークであり、さまざまな興味深い歴史を持つ。
標高497メートルで、盃をひっくり返したような形。戦国時代の山城「盃山城跡」があり、明智光秀の丹波攻めの際には連絡拠点になったという。 戦時中、付近一帯に「歩兵第七十連隊」が置かれた頃には、「丹波の鬼」とも称された勇猛果敢な部隊が、厳しい山岳訓練に臨んだ場所でもあった。 連隊のことを記した書籍「篠山練兵場」によると、毎年初夏に「盃山早駆け登山競走」を開催。代表が山を疾走し、登り下りで「23分8秒」という記録が掲載されている。ちなみに運動不足の記者が登山したところ、登りだけで約40分かかった。 また、特筆すべきは、「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる故・水木しげるさんとの関係。一時期、市内で暮らした水木さんは、著書の中で妖怪「おとろし」(不心得者を見つけると上から落ちてきて驚かす妖怪)に山で出会ったと記しており、後にその山は盃山と証言している。地元の男性(73)は、「連隊はよく知っていたけれど、妖怪の話まで。観光にも生かせそうやな」と笑う。 豊かな自然と手軽な登山、シーズンには雲海の名所として知られている盃山。数々の歴史を持ちながらも、ただ悠然とそこにある。