始まりは“のど痛”から「人食いバクテリア」の怖さ 抗菌剤服用を途中で勝手にやめるのは「超危険」
実は最近、筆者も劇症型溶連菌感染症の患者の相談にのった。医師になって初めての経験だ。患者の父親が旧知で、「左上腕が腫れて、強い痛みを訴えている。どうしたらいいでしょうか」と、電話で相談を受けた。 患者は20代後半で持病はない。まず問題はないだろうが、痛みがあまりにも強いので、「とりあえずは最寄りの救急病院を受診してください」と助言した。数日後、父親から「劇症型溶連菌感染症と診断され、入院中です。もう数時間遅れたら命が危なかった」との報告があった。
このケースは示唆に富む。というのも、最近、若年者で劇症型溶連菌感染症が増えているのだ。 1月24日、国立感染症研究所は「A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について」というレポートを発表した。 このレポートで注目すべきは、重症度が増している可能性があることだ。50歳未満の致死率(報告数に占める届け出時の死亡数)の割合が、従来は9.1%~19.7%だったものが、2023年以降は30.9%と上昇している。
国立感染症研究所は、病原性や伝播性が高いUK系統株が、国内に流入している影響があるのかもしれないと論じている。 ■溶連菌以外の感染症も増加 わが国で流行しているのは溶連菌だけではない。 現在、インフルエンザ、咽頭結膜熱(プール熱)が大流行しているし、昨年はこれら以外にヘルパンギーナ、流行性角結膜炎、RS(呼吸器合胞体)ウイルス、手足口病が大流行した。溶連菌、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナの感染の規模は過去10年で最大だ。
さまざまな感染症が流行するのは、日本に限った話ではない。 昨年11月、中国の北京市などで、インフルエンザ、マイコプラズマ、ライノウイルス、RSウイルスが大流行しているし、2022~2023年の冬にかけて、アメリカではコロナウイルスに加え、RSウイルス、インフルエンザが同時流行し、「トリプルデミック」といわれた。 この3つのウイルス以外にもヒトメタニューモウイルスやアデノウイルスも大流行している。