<映画評>ターザン:REBORN 愛する者を救うため英国貴族の”野性”が覚醒
ロンドンで美しい妻と暮らす英国貴族のジョン(アレクサンダー・スカルスガルド)。アフリカ・コンゴの密林に迷い込んだジョンは乳児の頃、両親を亡くし、ゴリラに育てられた。視察という名目で、複雑な気持ちを抱きつつ、故郷のコンゴへ赴くことになったジョンだが、それはすべて仕組まれたわなだった。ストーリーはコンゴで実際に起きていた歴史的な背景の中で展開していく。
最大の見どころは、ジョンがさらわれた妻を奪還すべく、野性を取り戻し、次々と繰り広げられるアクションシーン。つたを渡って密林を飛び回るターザンの姿は期待通り登場するが、長身と完璧に鍛え上げられた肉体から繰り出されるしなやかな躍動感は、ワイルドなのにどこかエレガントでこれまでになかった新しいヒーローの誕生を感じさせる。 旧友のライオンと触れ合ったり、ゴリラとの壮絶な格闘したりするシーンに思わずハラハラしてしまうが、出てくる動物はすべてCG。最先端の映像技術と画期的な空撮、視覚効果を駆使し、アフリカの大自然と野生環境を再現している。撮影の全編がほとんど英国のスタジオと屋外の撮影所で行われたとは思えないほどリアルに感じられる。最新の技術を駆使しながらも、決して無機質な描写にはなっていない。人間の関係性や自然との関わり合いなども丁寧に描かれている。
製作は『ハリー・ポッター』シリーズのデイビッド・イェーツ監督とそのスタッフが担当。なかでも忘れてはならないのが、『ベスト・キッド』、『オーシャンズ11』を手掛けた巨匠ジェリー・ワイントローブが製作に加わっていたということ。 ターザン役のスカルスガルドは「この映画の製作をジェリー・ワイントローブが務めるという事実は、僕がこのプロジェクトにぜひ参加したいと思った理由のひとつだった』と語る。イェーツ監督も、「彼はこの映画の真の立役者だ。これは彼が何年もかけて練ってきた作品なんだよ。彼がそれほどまでに世に出そうと決めた映画を完成させることができたのは、私たち全員にとって大きな名誉だ」と感慨深げに振り返る。さらに本作のエンドロールには、ワイントローブへ向けたメッセージが隠されており、彼は完成を待たず世を去ってしまったが、本作のプロデューサーや出演者らに与えた影響の大きさが感じられる。 日本版エンドロールの主題歌を担当するのは、4人組バンド”Alexandros(アレキサンドロス)"。本作のために書き下ろされた『Nawe,Nawe』は本作の壮大な世界観が美しく描写されているとイェーツ監督も大絶賛。”Nawe”とは「with you=あなたと共に」という意味で、作詞を手掛けたVo.≫の川上洋平さんは、歌詞のどこかにアフリカの言葉を入れることにこだわったという。 壮快なアクションと圧巻の最新映像技術で描く大自然と惜しまれつつ世を去った偉大な映画人・ワイントロープに敬意を表し、話題の主題歌にも注目したい。