【2024年FIA F2をイチから学ぶ】スーパーフォーミュラ王者、宮田莉朋のF1登竜門への挑戦。新型車両導入年の注目ポイント
2024年シーズンのFIA F2は2月29日~3月2日に開催される第1戦サクヒールに始まり、全14戦28レースが開催される。2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスでダブルタイトルを手にした宮田莉朋の参戦により、さらに注目が集まるFIA F2について、改めてシリーズの基本情報やレギュレーション、2024年シーズンのドライバーラインアップや開催スケジュールを整理してみよう。 【写真】FIA F2発参戦となる宮田莉朋 現在のFIA F2はGP2が名称を変更した2017年に誕生した。ただ、『F2』という名称の誕生は、F1が世界選手権となる前、最上位のF1規定よりも小排気量のシングルシーター車両規定として設定された1948年まで遡る。 1967年からは当時のF2規定の元でヨーロッパF2選手権が開催され、1985年に国際F3000選手権、2005年にGP2、そして2017年より現在のFIA F2へと発展を遂げた。時代の流れに応じて開催スタイルや名称を変えてきたが、ヨーロッパF2時代からF1へのステップアップカテゴリーとして、F1を目指す多くの若手ドライバーが参戦してきた歴史がある。2005年から始まったGP2初年度以降の日本人ドライバーの参戦歴とシリーズチャンピオンは下記のとおりだ。 ■GP2/FIA F2歴代王者&日本人ドライバー参戦記録 年度/チャンピオン/参戦日本人ドライバー 2005/ニコ・ロズベルグ/吉本大樹 2006/ルイス・ハミルトン/吉本大樹 2007/ティモ・グロック/中嶋一貴/平手晃平/山本左近 2008/ジョルジオ・パンターノ/小林可夢偉/山本左近 2009/ニコ・ヒュルケンベルグ/小林可夢偉 2010/パストール・マルドナド/– 2011/ロマン・グロージャン/– 2012/ダヴィデ・ヴァルセッキ/– 2013/ファビオ・ライマー/– 2014/ジョリオン・パーマー/伊沢拓也/佐藤公哉 2015/ストフェル・バンドーン/松下信治 2016/ピエール・ガスリー/松下信治 2017/シャルル・ルクレール/松下信治 2018/ジョージ・ラッセル/牧野任祐/福住仁嶺 2019/ニック・デ・フリース/松下信治/佐藤万璃音 2020/ミック・シューマッハー/松下信治/佐藤万璃音/角田裕毅 2021/オスカー・ピアストリ/佐藤万璃音 2022/フェリペ・ドルゴヴィッチ/佐藤万璃音/岩佐歩夢 2023/テオ・プルシェール/岩佐歩夢 ※2008年~2011年に開催されたGP2アジアシリーズは除く FIA F2はシャシー、エンジン、タイヤがワンメイクで争われるため、車両ごとのポテンシャルも変わらず、ドライバーの腕とチーム力が戦局を左右する。 2024年シーズンより、FIA F2には新型シャシーが投入される。ノーズ、前後のウイング、車体下面のフロアはホイール・トゥ・ホイールのレースを促進するべく設計されたとのことで、より白熱した接近戦が展開されることに期待したい。なお、本シャシーは2026年シーズンまでの3年間使用される計画だ。 エンジンはメカクローム製3.4リッターV6ターボエンジンを搭載する。エンジンスペックは前型と同じだが、2025年シーズンより導入されるアラムコ製持続可能合成燃料に対応するための新機能が搭載されている。 また、F1と同じピレリ製のタイヤを使用するも、F1とは異なりタイヤウォーマーの使用が禁止されているため、短い時間でタイヤを適切な温度まで温めるウォームアップ技術もレースウイークの結果を左右する大きなポイントだ。 ■2024年F2カーの諸元抜粋 –/– シャシー寸法/全長:5284mm全幅:1900mm全高:1097mm(FOMロールフープカメラ含む) ホイールベース/3135mm エンジンメーカー/メカクローム(フランス) エンジン仕様/V6 3.4リッターシングルターボ 最大出力/620HP/8750rpm 最大トルク/570Nm/6000rpm 安全基準/2024 FIA F1安全基準準拠 サバイバルセル/ダラーラ製サンドイッチカーボンアルミハニカム構造ザイロン素材のアンチ・イントリュージョンパネル フロント&リアウイング/ダラーラ製カーボン構造 ボディワーク/カーボン/ダラーラ製のケブラーハニカム構造 ヘイロー/チタン製F1仕様 ギヤボックス/ヒューランド製6速縦型シーケンシャル ギヤ操作/パドルシフトによる電気油圧制御 クラッチ/ZFザックス製カーボン 車載スターター/非搭載 サスペンション/プッシュロッド式ダブルスチールウィッシュボーンフロント:ツインダンパー&トーションバーリヤ:スプリング ダンパー/コニ製/フロント2方向/リア4方向調整可能 調整可能アンチロールバー/前後 ブレーキキャリパー/ブレンボ製6ピストンモノブロックキャリパー ブレーキディスク&パッド/カーボンインダストリー製カーボン ホイール/OZ製マグネシウムホイール前:18インチx12J/後:18インチx13.7J タイヤ/FIA F2専用のピレリスリック&ウエットタイヤTPMS(タイヤ空気圧監視システム) DRS/F1のDRSと同じ機能/油圧可動式 ■1週末に2レース&リバースグリッド。F1にはない独自フォーマット FIA F2は全戦がF1のサポートイベントとして開催される。基本的なレースフォーマットはレースウイーク初日に45分間のフリー走行と30分間の予選。2日目にレース距離120km/最大時間45分のスプリントレース(決勝レース1)。3日目にタイヤ4本交換に伴うピットストップが義務付けられるレース距離170km/最大時間60分のフィーチャーレース(決勝レース2)が行われる。 レースフォーマットにおけるF1との大きな違いが1週末に2度の決勝レースが行われること、そしてリバースグリッド制の導入の2点だ。レースウイーク初日の予選結果により3日目のフィーチャーレース(決勝レース2)のグリッドが決定。そして予選結果から上位10台を逆順にし、2日目のスプリントレース(決勝レース1)のグリッドを決定する。 このリバースグリッド制により、たとえば、予選で最速タイムをマークしたドライバーは、スプリントレース(決勝レース1)では10番手から、フィーチャーレース(決勝レース2)ではポールポジションからのスタートすることになる。 一見不公平にも見えるリバースグリッド制だが、スプリントレース(決勝レース1)では上位8台までがポイントを獲得でき、優勝ドライバーには10点。一方、フィーチャーレース(決勝レース2)では上位10台までがポイントを獲得でき、優勝ドライバーには25点が与えられる。獲得できるポイント差が大きいため、タイトル獲得へ向けては2レース合わせてより多くのポイントを獲得し続けられるかが、大きなポイントとなる。 なお、予選ポールシッターには2ポイントが与えられるほか、レース中にファステストラップを記録したドライバーが10位以内でフィニッシュすれば1ポイントが与えられる。そのため、1大会(1週末)で獲得できる最大ポイントは39点となる。 2024年開催スケジュールにおける最大の注目は、FIA F2としては初となるカタール開催だろう。近郊の砂漠から吹く砂の影響も受けやすい高速レイアウトのロサイル・インターナショナル・サーキットで、若手ドライバーたちがどのようなレースを繰り広げるかは大いに注目したいところだ。 ■2024年FIA F2開催スケジュール Round/日程/開催地 1/2月29日~3月2日/サクヒール(バーレーン) 2/3月7~9日/ジェッダ(サウジアラビア) 3/3月22~24日/メルボルン(オーストラリア) 4/5月17~19日/イモラ(イタリア) 5/5月23~26日/モンテカルロ(モナコ) 6/6月21~23日/バルセロナ(スペイン) 7/6月28~30日/レッドブル・リンク(オーストリア) 8/7月5~7日/シルバーストン(イギリス) 9/7月19~21日/ハンガロリンク(ハンガリー) 10/7月26~28日/スパ・フランコルシャン(ベルギー) 11/8月30~9月1日/モンツァ(イタリア) 12/9月13~15日/バクー(アゼルバイジャン) 13/11月29日~12月1日/ロサイル(カタール) 14/12月6~8日/ヤス・マリーナ(アブダビ/アラブ首長国連邦) ■日本王者、宮田莉朋の戦いはいかに 2024年シーズンを戦う22名のドライバーラインアップのうち、10名がFIA F2フル参戦1年目を迎える。ルーキーの中でも注目は、全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスのダブルタイトルを手にした宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)だろう。欧州でキャリアを重ねてきたライバル勢に対し、日本の王者はどのような走りを見せてくれるのか。その戦いからは目が離せない。 2023年のFIA F3チャンピオンに輝いたガブリエル・ボルトレートはマクラーレン育成に加入し、インビクタ・レーシングから参戦する。また、FIA F3を経験せず、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)からFIA F2に飛び級を果たすアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)の走りも楽しみなポイントだろう。 特に17歳のアントネッリはシングルシーターでのフルシーズンを2年しか経験していないものの、2022年のイタリアF4、ADAC F4、FIA モーターゲームズのF4カップ、2023年のフォーミュラ・リージョナル・ミドルイースト、そしてFRECAという5選手権でタイトルを獲得しており、ルイス・ハミルトンが離れるメルセデスF1の後任予想で、既に名前が挙げられているドライバーだ。 また、参戦2年目を迎えるドライバーたちにとっては、ルーキーには負けられない1年となる。昨年ランキング5位のビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)、昨年ランキング6位のオリバー・ベアマン(オリバー・ベアマン/フェラーリ育成)はデビューイヤーから印象強い走りを見せていただけに、2024年のタイトル候補に違いない。 そして同じく参戦2年目を迎え、宮田のチームメイトとなるゼイン・マローニ(ロダン・モータースポーツ/ザウバー育成)は、昨年こそ2位2回獲得も未勝利に終わっているが、開幕前に3日間行われたプレシーズンテストのうち、ドライコンディションで走行できた2日間では両日トップタイムを記録しており、注目すべき存在だろう。 2024年シーズンのFIA F2は2月29日~3月2日に、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されるF1第1戦バーレーンGPのサポートイベントとして開幕を迎える。欧州でキャリアを重ねてきたライバル勢に対し、全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスのダブルタイトルを手にした宮田がいかに挑み、どのような走りを見せてくれるのか。その戦いからは目が離せない。 ■2024年FIA F2エントリーリスト Car.No/Rookie/Driver/Team/Program 1//ビクトール・マルタンス/ARTグランプリ/アルピーヌ育成 2/○/ザク・オサリバン/ARTグランプリ/ウイリアムズ育成 3//オリバー・ベアマン/プレマ・レーシング/フェラーリ育成 4/○/アンドレア・キミ・アントネッリ/プレマ・レーシング/メルセデス育成 5//ゼイン・マローニ/ロダン・モータースポーツ/ザウバー育成 6/○/宮田莉朋/ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム 7//ジャック・クロフォード/ダムス・ルーカスオイル/アストンマーティン育成 8//ファン・マヌエル・コレア/ダムス・ルーカスオイル/- 9//クッシュ・マイニ/インビクタ・レーシング/アルピーヌ育成 10/○/ガブリエル・ボルトレート/インビクタ・レーシング/マクラーレン育成 11//デニス・ハウガー/MPモータースポーツ/- 12/○/フランコ・コラピント/MPモータースポーツ/ウイリアムズ育成 14//エンツォ・フィッティパルディ/ファン・アメルスフォールト・レーシング/- 15/○/ラファエル・ヴィラゴメス/ファン・アメルスフォールト・レーシング/- 16//アムーリ・コルデール/ハイテック・パルスエイト/- 17/○/ポール・アーロン/ハイテック・パルスエイト/- 20//アイザック・ハジャル/カンポス・レーシング/レッドブル育成 21/○/ジョセップ・マリア・マルティ/カンポス・レーシング/レッドブル育成 22//リチャード・フェルシュフォー/トライデント/- 23//ロマン・スタネ/トライデント/- 24/○/ジョシュア・デュルクセン/PHM AIXレーシング/- 25/○/テイラー・バーナード/PHM AIXレーシング/- ※上記表組および本記事では、FIA F2オフィシャルサイトに則し、スポット参戦経験者含むFIA F2フル参戦初年度となるドライバーを総じてルーキーと表記する [オートスポーツweb 2024年02月28日]