日ハム斎藤佑樹の無安打8死四球1失点の謎記録をどう評価すべきか?
斎藤の広報談話は、「打たれたくない意識が強くなってしまったのかもしれません。少し慎重になり過ぎました。先発投手の責任を果たせず、悔しいです」というもの。ストライクゾーンの四隅へのコントロールを気にしすぎるあまりボールが先行してしまったというわけである。 ノーヒットの佑ちゃんを評価すべきか、ストライクの取れなかった佑ちゃんを先発失格とみなすべきか。 専門家は、どう見たか。 パ・リーグの野球に詳しい元阪神、ダイエー(現ソフトバンク)の池田親興さんの評価は後者だった。 「よく1点で収まったと思う。ストライクゾーンで勝負できないのだから野球にならない。カット、シュートを使いボールを動かしていこうという意図はわかるが、ストライクゾーンで動かさないとバッターは手を出さない。肉体改造に取り組んでいると聞いていたが、肩、股関節の稼動域が狭く見えた。怪我と向き合っている松坂大輔よりも使えていない。上半身と下半身のバランスが崩れていた。矢を放つ前に弓矢を引っ張るような体の使い方がまったく見えなかった。ここまでコントロールの悪いピッチャーではなかったはずだが……結果を出さなくてはならないという緊張感もベンチの期待感もあったのだろう。ただ、今の状態で先発のチャンスをもう一度与えるのは厳しい。年々、悪くなっているという印象さえ受ける」 打者18人に74球を投げてストレートは14球だけ。マックスは141キロ。ほとんどがカット、ツーシーム、フォーク、チェンジアップという変化球でまとめようとしたが、ストライク、ボールがハッキリとしすぎていた。右足ですっと立ち、背中を少し丸まるようにパワーを内側にためてマウンドの傾斜をつかって打者に向かっていくメジャースタイルの投球フォームに今季からマイナーチェンジ。左肩が開かないように意識していた。制球力に重点を置いたフォームだ。そして、そのフォームが安定できるようにオフから肉体改造に取り組んでいたが、池田さんが分析するように未完成だった。 それでも随所にいいボールもあった。福浦を三振にとったカットは切れていたし、4回の清田への2-0からの外角低めのストレートも手の出ないボールだった。だが、1軍の先発を任せるとなると、そのいいボールの割合があまりに少なかった。今後、そのボールをどう増やしていけるか。 「この日は、ほとんど投げなかったが、フォーシームを磨かないことには、動くボールは通用しない。そして、それをきっちり四隅に決めるコントロールも必要になる」というのが、池田さんの指摘だ。 野球選手というのは、互いの力をだいたい、わかっているものである。よほどのチーム事情がない限り、今のままの斎藤に先発チャンスを与え続ければ「なんで?」という不協和音が、チーム内外から生まれかねない。ファームで「誰が見ても」という結果と内容を積み重ね1軍マウンドに帰ってくるしかないだろう。 プロ8年目。生き残るための技巧派に変身中の斎藤佑樹は崖っぷちに立たされている。