訴訟対策して制作…は本当! 『猿の軍団』TV放送50年 円谷プロ×小松左京の傑作SF!
猿がしゃべる 車を運転する 銃を撃つ
50年前(1974年)の秋にTV放送開始したSFドラマ『猿の軍団』(TBS)をご存じでしょうか。 【画像】猿がヤバいあとは日本終了のお知らせ こちら20時からの「小松左京ワールド後半戦」です 放送は日曜の19時30分からで、この時間帯の視聴率は裏番組『アルプスの少女ハイジ』(フジテレビ)がダントツであり、2番手を『宇宙戦艦ヤマト』(NTV)と競う様相でした。そうしたなか、SF、特撮、オカルト好きの男子は断然『猿の軍団』を観ていたはずです。 最初は、どこかで見たような猿人のビジュアルに、みんな「ん!?」と目を細めたに違いありません。 それもそのはず、このドラマ企画は、前年12月にTBSで放映した映画『猿の惑星』が37.1%の高視聴率をマークしたのが発端でした。制作の円谷プロは、『ウルトラマンレオ』の終了で第2期「ウルトラ」シリーズが終結したこともあり、この新番組を全力で進行させます。 ただ、皆さん絶対にこう思うでしょう。 「『猿の惑星』側から訴えられなかったの?」 案の定、訴えられました。『猿の惑星』の制作会社、20世紀フォックスは、早い段階で制作中止要求の仮処分を東京地裁に申請します。しかし、TBS&円谷プロは訴訟問題に備え、「オリジナル」と言い切れる対策を講じていたのです。 SF作家の小松左京氏が原作を担当し、豊田有恒氏、田中光二氏という人気作家も加わって全体を構成、会議の様子はテープに録音して証拠としました。猿の学術書を参考にしてSF的考証も行ったうえで、今までにない「謎解き・サスペンス・SF・特撮・連続・ドラマ」を作り上げます。 また猿のメーキャップ術も開発するなど、いくつものオリジナル要素をアピールしました。その結果、20世紀フォックスは訴訟を取り下げたのです。
なぜ猿が人間を支配した?
『猿の軍団』のあらすじは……「低温生化学研究所」に勤める科学者の「泉和子」と甥の「次郎」、その友人「ユリカ」が、大地震の影響でコールドスリープ装置(人工冬眠する機械)に閉じ込められ、そのまま冬眠、目を覚ますとそこは西暦3713年の未来でした。人間の姿はなく、なんと猿が文明を築いています。猿の中央政府から追われる3人は、人間の生き残りの青年「ゴード」と出会い、「なぜ人間が猿に支配される世界になったのか?」という謎を解き明かすべく旅を続けるのでした。 全26話完結の連続ドラマです。人と違わぬ知能を持つ猿の社会は、現代の人間社会模様と基本的には変わりません。猿にはいくつか種族があり、政府は主にゴリラ、チンパンジー、オランウータンが仕切り、権力抗争や内紛もありました。 一般市民もたくさん登場し、人間に対して好意的な者や敵対的な者が混在、人間と猿が仲間になって政府に立ち向かったり、マントヒヒがユリカにプロポーズするシーンもあったりするなど、猿と人間のあいだに生まれる愛や悲しみ、憎悪などが渦巻く不思議な物語になっています。ベストセラー『復活の日』『日本沈没』同様、少人数の人間が危機に立ち向かう展開は、さすが小松左京先生とうなるばかりです。 ●撮影の裏側で…… 余談ですが、2014年に放送40周年を記念してリリースされた『SFドラマ 猿の軍団 DVD-BOX』の特典映像で、潮哲也さん(ゴード役)、徳永れい子さん(泉和子役)、斉藤浩子さん(ユリカ役)の3人が撮影秘話を話しています。実は、不思議な出来事がたくさんあったそうです。 ロケ地は、人気(ひとけ)のない山奥ばかりで過酷だったとはいえ、「スタッフを含めてケガをする者が続出」「ゲバー役の畠山麦さんが、マスクをかぶって走った際に倒れて大けが」といったトラブルから、「斉藤さんと数人が、光る小型UFOが飛び去るのを目撃」「潮さんに霊が憑いて、折ったこともない折り鶴を作っていた」といったことまであったといいます。
玉城夏