外国人増えるスノーリゾート、応募殺到の移住物件争奪戦 「家が見つからない…」 バブル期の施設あっても手に入らない特別な事情
長野県の人気観光地・野沢温泉村、定住したくても…
趣のある建築の外湯(共同浴場)が点在する路地を、外国人観光客が行き交う。温泉やスキー場が国際的に知られる長野県下高井郡野沢温泉村。観光立村を支えるのが、冬場に多い外国人客の存在だ。 【グラフ】こんなに増えた、野沢温泉村の外国人住民 宿泊施設でスタッフとして働く誉田(こんだ)貴子さん(32)は、活気あふれる温泉街の様子とは裏腹に、浮かない表情で言う。「家が見つからないんですよね」 京都市出身。子どもの頃からスキー競技に打ち込み、何度も訪れた村に愛着を抱いて昨年4月に移り住んだ。温泉街の社員寮で暮らす。ただ、温泉街にマッサージ店を構えて定住したい思いがあり、社員寮は「仮の住まい」。京都市から住民票は移していない。家が見つからない状況が続けば、「村に残るか考えないといけない」とこぼす。
活発な不動産取引、需給逼迫し住宅不足
村内では温泉街を中心に、海外からの移住者が不動産を活発に取得している。このため需給が逼迫(ひっぱく)し、住宅不足が顕在化している―。関係者は異口同音に村の実情を語る。
訪日客の多さから、外国人向けの宿泊施設や飲食店の需要が高まり、外国人による新たな事業展開を見据えた不動産投資が活発だ。昨年発表の基準地価で村の商業地の変動率が4年ぶりのプラスに転じたのも、こうした事情が背景にあるとされる。 地元観光協会加盟の356事業所のうち、外国人がオーナーの宿泊施設や飲食店は40ほどを占める。冬場に働く外国人スタッフも多い。2023年12月末時点の村の人口は3500人余。このうち336人がオーストラリア人など外国人の住民登録者で、新型コロナの5類移行に伴い急増している=グラフ。
手放すのを知られたくないから…市場に出回らない物件
スキーブームに沸いたバブル期に民宿を構えた経営者が、高齢や後継者不足で諦め、村に商機を見いだす外国人に高値で売却する―。こうした形の個人間取引が多いとされる。手放すことを知られる後ろめたさからか、不動産会社を介して物件が市場に出回ることは少なく、円安も手伝って相場より高値で取引される例もあるという。施設が集まって人気の高い温泉街で、住宅を求める人の手に物件が届かない理由はここにある。