自動車業界に衝撃! ホンダ・日産 提携検討を読み解く
ただ、日産の電動化・知能化技術については「ホンダとの親和性が非常に高い」と評価。「日産は非常に技術ドリブン(技術主導型)の会社で、ホンダと似ている部分がある」として、企業風土の違いも「必ずうまく乗り越えて最大の効果が出せると確信している」と述べました。 ホンダは電動化・知能化の分野では世界で初めて自動運転レベル3の実用化に成功するなど、存在感を示しているものの、販売面ではいまひとつ影が薄く、何らかの提携の必要性は感じていたようです。ソニーグループと提携するなどさまざまな模索を続け、これまでの「独立路線」から変化の兆しが出ていました。 新たなパートナーを探す日産、独立路線からの脱却を模索するホンダ……競争が激化する自動車業界で、両社は何か手を打つ必要を感じたのでしょう。今回の会見はそのアピールであったかと思います。資本提携については現状ではないということです。なお、違う角度から見ると、両社が手を組むことは、決して荒唐無稽なことではないと感じます。 日本のメガサプライヤー=部品メーカー大手の1つに、日立Astemo(以下アステモ)という会社があります。この企業の成り立ちは複雑で、日立製作所の自動車機器部門が、日産グループから離脱したユニシアジェックス(厚木自動車部品、日本電子機器を前身に持つ)と統合。さらに日立による合併、分社化を経て、ケーヒン、ショーワ、日信工業というホンダ系のメーカーが合併し、2021年に現社名となります。
アステモは現在、日立とホンダが主要株主で、ホンダ向けのEV用電動アクスルを受注する一方、日産グループのJATCO(ジヤトコ)が日産に供給する電動パワートレイン向けにモーターとインバーターを受注しています。つまり、サプライヤーの視点で見ると、ホンダと日産の距離はすでに縮まっていると言えるわけです。関係者によると、今回の発表にアステモの関与はないということですが、今後については、こうしたサプライヤーの動きも見ていく必要があると思います。 今回の会見には中国の国営メディアも参加していました。中国も大きな関心を寄せていることの証左でしょう。会見資料はA4の紙1枚のみ、両社のトップは淡々とした受け答えで、決して明るい雰囲気とは言えませんでした。この手の会見では終了後、フォトセッションでトップ同士の握手と笑顔がつきものですが、フォトセッションはしぶしぶ行ったものの、報道陣から促された握手には応じませんでした。両社の厳しい環境が象徴されていたと言えます。(了)