武藤議員釈明会見で波紋 “異例”ではない雑誌記者ら締め出し
行政や政治家のコントロールに乗る?
今や言い古された感じすらある記者クラブ問題ですが、会見する側から見ると、「気心の知れた記者」「自分たちを理解してくれる記者」、いわば“仲間”との間だけで会見したい、ということです。簡単に言えば、メディアの選別。ですから、取材される側の都合によって、記者クラブ所属の記者がはじき出されることもあります。 8月末、三菱地所はJR東京駅前で高さ日本一となる超高層ビルの建設を発表しました。ところが、正式な記者発表に先駆けて日本経済新聞がこの計画を報じたことから、三菱地所は激怒。8月31日の発表までは報道・取材を控えるよう各社に要請し、日経以外のメディアにはそれを理解してもらっていた、とする文書をHP上に掲載しました。その上で、日経記者を出入り禁止するという貼り紙が出されました。 三菱地所側は「公平に正確な情報を開示する」ことが目的だったとしています。日経の記事は細かな部分で発表と異なる箇所があったようで、この点では日経側にも取材の甘さがあったと言えるでしょう。ただ、一方では、大きな問題も見えてきました。事前の報道も取材も控えて欲しいとの要請を、各社が承諾している点です。民間企業であっても、大企業の影響力は相当に大きいわけですから、読者・視聴者の知らないところで「報道・取材を控えて」との要請をずるずる受け入れていると、結果として、相手側の情報コントロールに乗っただけという結果になりかねません。相手先が官公庁や政治家などの場合は、なおさら問題になるでしょう。
記者クラブ制度による「ぬるま湯体質」
実は、記者クラブ内では当局者と記者側の間で、「白板協定」「黒板協定」と呼ばれるルールが厳然と残っています。クラブ内のボードに「解禁○○日」などと書き込みされた案件については、それを厳守するという“紳士協定”で、それを破った場合、そのメディアには「出入り禁止」処分を下されることがあります(多くは数日間の期限付き)。 似たような例としては、検察取材があります。検察側が指定した特定の幹部以外の検事(多くは一線の検事)に取材したことが発覚すれば、そのメディアを出入り禁止処分になります。しかも、この“出禁”を決めるのは検察側です。 メディアを自在に使いたい当局者、記者クラブ制度の中でぬるま湯体質が身に付いたマスコミ。その双方が作り出す「メディア事件」は今後もなくなることはないでしょう。 ところで、武藤会見から閉め出された週刊文春はどうなったのでしょうか。同誌はその直後、「武藤議員 釈明会見でのウソ発覚!」という独自スクープを放ち、一連の報道でさらに一歩リードしました。マスコミが忘れてしまったかのような鮮やか報道に溜飲を下げた読者も多かったに違いありません。