【コラム】ニューヨークで注目「芸術と食の同時体験」ができる ミシュランシェフによるアートギャラリーとは
■ ギャラリーオープンの発想は日本の茶室文化にあった
今ではミシュランの星を2つ獲得しているトップシェフである大堂氏に、アートギャラリーをオープンした理由を聞いた。「アートって身近なところにいっぱいあると思う。遠い存在じゃなくて、普段、もう少し身近に感じて欲しい。そんな空間を作っていきたい」さらに、自身の活動を日本の茶室文化になぞらえてみせた。 大堂シェフ 「日本文化にはそもそも茶室があって、床の間には素晴らしい作品が置かれている。陶器のお茶碗でお抹茶を飲んだり食事をする。これこそが総合芸術。お互いがリスペクトしあって良いもの作ろうとすれば、素晴らしいものができあがる」 このギャラリーに何度か足を運んでいる雑誌「エル・デコ」編集長のイングリッド・アブラモビッチさんは、食事と芸術の融合は、生きることと同じだと表現しながら、それが体験できるこのスペースを高く評価した。「芸術作品を見るだけでなく、触って、使うことの重要性にも気付かされた」 ニューヨーク市内には、1400ほどのアートギャラリーがあると言われているが、その多くは、オープニングイベントに飲み物や軽食を提供することがあるにしても、芸術作品のコンセプトに沿った食体験を売りにしているスペースはほとんどない。 隣の懐石料理レストランの中も特別に見せてもらうと、その回廊にも辻村氏の作品が飾られていた。料理の提供にも、彼の手になる皿が使われているという。 今回の展示は年内いっぱい続く。今後も新たな展示が予定されていて、新しいアートの楽しみ方を知ったニューヨーカー達のさらなる注目を集めそうだ。 ◇
■勝村拓也 プロフィール
NNNニューヨーク支局プロデューサー。在米歴20年。大統領選挙、オリンピック、宇宙開発、テクノロジー、最新カルチャーなどを取材。世界の社会・文化、人間模様に興味あり。