「ウナギ、なぜ安い?」いきなり急増「鰻の成瀬」に専門家が警告…安さの《カラクリ》と味の《落とし穴》
職人いらず、ボタン1つで完成
また、高級店では骨の軟らかい若いウナギを仕入れることが多いのに対し、「鰻の成瀬」では、成長し、脂の乗った大き目のウナギを調達しているという。こうすることで、ウナギ1匹からより多くの可食部を得ており、ムダなくボリュームを高めることにつながっているのだ。 さらに、他の店舗と比べて運営にかかる固定費を抑えているのも、低価格につながる秘密だ。永田氏が続ける。 「ウナギは蒲焼きに加工された状態で各店に運ばれ、あとは独自開発のウナギ焼き機を使うことで、ボタンひとつで蒸しと焼き調理が行われます。そのため、職人を置く必要はなく、アルバイトスタッフだけで営業できてしまうので、人件費が抑えられます。 また、フランチャイズ店舗においては、居抜き物件を推奨するなど、3等地戦略で家賃比率を抑えているのもポイントです。タピオカなど一過性のブームに頼った食品と違い、ウナギは流行り廃りのない目的来店型の商材。そのため駅前や繁華街の1等地でなくとも、集客できるというわけです」 「'25年1月には300店舗に到達する見込み」「47都道府県制覇を成し遂げる」と語っている山本社長。その言葉通り、「鰻の成瀬」はウナギ業界の覇権を握るのか。 この問いに対して、永田氏は「そう簡単にはいかないだろう」と難色を示す。その理由は、飲食店にとって欠けてはならない“クオリティ”の問題だ。
あくまで「美味しさは二の次」
「フランチャイズビジネスにおいて加盟店がもっとも恐れるのは『破綻』。その点、『鰻の成瀬』は低投資出店、非常に軽量なオペレーション、そしてウナギという商材であることから、がっつり稼ぐわけではないけれど、潰れにくい業態だと考えられます。だからこそ、ハイスピード出店もなのでしょう。 その点では、ビジネスモデルは高く評価すべきでしょう。一方で、私が問題視しているのが、提供する料理のクオリティの低さです。確かにボタンひとつでウナギの蒲焼きが出来るわけですが、素人が扱う以上どうしても、焼きムラがあったり、ご飯の炊き方がイマイチだったり、店ごとにバラツキが出てしまっている現状です」(永田氏) 本来、フランチャイズ経営では、加盟店が正しいノウハウに従っているかどうか本部がチェックする「スーパーバイジング」が行われるのが常だ。だが、「鰻の成瀬」ではオペレーションの軽量化を重視するため、本部によるサポートをあえて省いている。これでは、各店ごとの味の改善は期待できない。 「山本社長自身、かつて『1ミリも飲食には興味がない』と口にしていたように、あくまでフランチャイズビジネスとしての成功が第一のようで、美味しさを向上させることは二の次なのでしょう。非常に完成されたビジネスモデルだけに、クオリティの低さが勿体ないです」(同) うなぎのぼりの急成長がこのまま続くかどうか。「鰻の成瀬」の先行きに注視したい。 【つづきを読む】日本人が知らない「ウナギの闇」どうしてこんなに高くなったのか?
マネー現代編集部