基地の町・佐世保…安保巡り応酬 衆院選で与野党幹部が長崎県入り 保守、反保守票の取り込み狙い
安全保障や防衛費増額など国防を巡る論戦は自民党の裏金問題でかすみがちだが、衆院選の争点の一つだ。24日はこうした論戦で発信力がある与野党幹部が長崎県入りし、基地の町・佐世保などで応酬を繰り広げた。各陣営からは保守票、反保守票をそれぞれ取り込みたいとの狙いが透ける。 自民の小野寺五典政調会長は長崎1、3区候補者の応援に入り、3区では前職、金子容三候補の夜の個人演説会に駆け付けた。場所は防衛相時代に手がけた陸上自衛隊水陸機動団のお膝元、相浦地区と隣町の北松佐々町。小野寺氏の応援入りには、金子候補と同じ旧岸田派ということもあるが「自衛隊票をとにかく固めたい」(陣営関係者)との狙いも見え隠れする。 小野寺氏は長崎市の演説で中国やロシア軍用機の領空侵犯などを挙げ、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを強調。相浦では「安全保障で一番大切なのはすごい戦闘機などではなく、地元の理解。相浦、佐世保の皆さんのご理解があるからこそ国が守れている」と語り、今後も自公政権を支えてほしいと訴えた。 金子陣営は1年前の旧長崎4区補選同様、防衛力強化の訴えを「支持集めに有効な手段」(陣営関係者)と捉える。金子候補は演説のたび「今、政権交代している暇はない。海外に付け入る隙を与えてしまう」と安全保障と選挙を絡めた発言を繰り返す。 佐世保市内の自衛隊基地には8千人近くが勤務。保守層が多い自衛隊や基地関連企業は国政選挙、地方選挙でも無視できない票田となっている。陣営幹部は「小野寺氏の佐世保入りは保守層への強いメッセージになったはずだ」と話す。 ◇ 「頑固に平和。暮らしが一番」。社民党の福島瑞穂党首も長崎1、3区に入り街頭演説。佐世保市中心部では立憲民主党元職、末次精一候補の横に並び、1945年結党以来の老舗の護憲政党イメージを前面に出す選挙戦術で援護射撃した。 福島氏は演説で防衛費増額などに関連し「軍事費にお金をつぎ込むから教育や介護、医療、年金が圧迫されている」と指摘。「自民党が競り勝てば憲法改悪、軍拡、戦争の道に突き進む。戦争ではなく平和」と支持を訴えた。 社民は衆院解散直後にも副党首が佐世保入りしており、議席復活を狙う比例九州の票の掘り起こしを図っている。同市には社民支持層が一定勢力あり、陣営関係者は「まとまった票が計算できる」と言う。 末次候補は金子候補とは対照的に、公示後の演説で安全保障に触れることはほぼない。既得権益の打破が訴えの中心で、安全保障は「対立軸にならない」とも話す。日本維新の会新人の井上翔一朗候補も演説で安全保障に触れることはなく、基地の町での論戦はかみ合わないまま最終盤に差しかかっている。 そもそも野党の防衛政策には違いがある。「野党連携の手前、末次氏は積極的に発信しづらいのだろう。言い出せば野党のバラバラ感が顕在化する」と自民関係者は推察する。