小林千晃、石見舞菜香、種﨑敦美ら 2023年のアニメ界を牽引した声優たち
2023年はアニメファンのみならず、幅広い層から支持を受ける作品が数多く登場し、次クールへの期待も高まるような作品が多かった。まさに“アニメ豊作の年”とも言える2023年に、際立った活躍を見せた声優たちを振り返っていこう。 【写真】祈りを捧げるフリーレン まずは、1年を通してアニメ界で存在感を示してきた小林千晃。2023年冬の『氷属性男子とクールな同僚女子』での主演を皮切りに、『マッシュル-MASHLE-』のマッシュ・バーンデッド役、『地獄楽』の画眉丸役といった様々な役柄を演じ分け、毎クール主要なキャラクターに抜擢されていた。 小林千晃の声優としての魅力は、“カッコいいだけでない、多様なヒーロー像”を見事に表現する声の力にある。現在放送中の『葬送のフリーレン』でも、臆病ながらも仲間のために戦う愛らしい一面を持つ戦士・シュタルクを演じ、ファンを魅了している。彼の中低音でクリアな声質と、日常パートとバトルパートでのギャップのある演技は、2024年も引き続き高い需要を見せるだろう。 上田麗奈も、2023年のアニメ界で輝きを放った声優の一人だ。2023年は、『わたしの幸せな結婚』の斎森美世役や『アリスとテレスのまぼろし工場』の佐上睦実役で、不遇なヒロインを繊細に演じてきた上田。2024年1月には『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』への出演、さらに公開時期は未定ながら『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』でのレゼ役も控えている。特にレゼ役は、公開情報が出る前から大きな注目を集め、「レゼを誰が演じるのか」という期待が高まっていた。原作ファンからすればかなり難しい役であるレゼを上田が、どう演じていくのかも気になるところ。 社会現象となったアニメ『【推しの子】』において、実力派キャストが揃う中、存在感を際立たせた石見舞菜香の名前も外せない。石見は『転生王女と天才令嬢の魔法革命』でのユフィリア・マゼンタ役や劇場アニメ『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』などでその才能を発揮し、注目を集めた。とはいえ、やはり石見の今年の活躍といえば、『【推しの子】』で演じた黒川あかねの“あるシーン”。 SNSを中心に大きな話題となり、バズを生むほどの影響力を示したこのシーンでは、あかねがアイの仕草をトレースしながら教室に入るという、劇中劇のような構造が取り入れられていた。石見の演技によって、あかねなりの演技でかたどられたアイの雰囲気が見事に表現され、視聴者に強い印象を残した。『【推しの子】』の数々の名シーンの中でも、このシーンは特に切り抜き動画やSNSでのコメントが飛び交い、圧倒的な盛り上がりを見せていた。 また、2023年はすでに業界内で長くキャリアを築いてきた声優たちにとってもさらに飛躍の年だったのではないか。その点で言えば、種﨑敦美の更なる活躍は特に目覚ましく、2023年も『SPY×FAMILY』でのアーニャ役をはじめ、『葬送のフリーレン』のフリーレン役や『薬屋のひとりごと』の玉葉妃役など、幅広いキャラクターを独自の魅力で演じ分けてきた。 さらに、アニメだけでなく、今年だけで劇場公開の映画に4本、ゲームに15本以上の声の出演をしており、その多忙すぎるほどの活躍には目を見張るものがあった。種﨑と同じ声優である宮崎遊との結婚が、声優業界で大きな話題となったのも記憶に新しい。 また、近年、実写作品の俳優や歌手としてマルチタレントに近い形で活躍をする声優が増えてきている。宮野真守や津田健次郎然り、アニメーションの枠を越えて広く活躍する声優に注目が集まる中で、今年特に印象に残ったのは、木村昴の多岐にわたる活躍である。多くの人にジャイアン役で知られる木村。NHK大河ドラマ『どうする家康』では、徳川家康の家臣・渡辺守綱役を熱演し、ドラマファンからも高い評価を受けた。 映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では冒頭CMシーンでのマリオブラザーズのラップを担当し、その才能の幅広さを見せつけた。さらには恋愛リアリティショー『LOVE CATCHER Japan』のスタジオMCとしても活躍しており、多様なジャンルで存在感を示している。 アニメ界においても『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』ではŹOOĻのボーカル・狗丸トウマ役、『金の国 水の国』ではジャウハラ役を担当し、その多才ぶりを存分に発揮した。ドラマ、映画、リアリティショーといった多岐に渡るジャンルでの成功は、今後のエンターテインメント業界における彼のさらなる飛躍を予感させる。 すでに1月からの冬クールアニメの放送が迫っているが、5人の声優は2024年にどんな作品のクレジットに名を刻むことになるのだろうか。さらに、5人の共演やアニメ以外の方面での活躍も期待したいところ。2023年のアニメ界を牽引した声優たちの“これから”に、多くのファンが目を向けていることだろう。
すなくじら