国内のバナナ生産 広がりは? 41都道府県で実績あり 安定生産、加温経費が課題
燃油高騰 撤退も
燃油価格高騰などを背景に、栽培から撤退する事例も出てきている。東北で生産・出荷していた産地関係者によると、まだ園地はあるものの、「燃油価格の高騰で採算が合わなくなってしまい、23年の冬からハウスの加温をやめた」と話す。現在は撤退の方向性で話が進んでいるという。 中部地方でも経費高騰を理由に「今回の収穫を最後に生産をやめる」とする経営体があった。生産意欲はあるものの「温度や湿度、照度の管理が難しく、実がついていない」(四国の生産者)事例もあった。 国産の主産地・沖縄県でも課題がある。JAおきなわは露地栽培が主体のため、「台風などの強風の影響を受けやすく、生産量は不安定」と話す。使える農薬が限られていることもあり「県外への長期輸送では傷みの懸念があるため、大半が県内消費となっている」(JA)という。
取材後記
バナナは栄養価が高く、朝食など日常使いのニーズが根強い。総務省の家計調査では、23年の1世帯(2人以上)当たりの年間支出金額と購入数量は、生鮮果実の中で1位だ。 この取材を機に私も、沖縄産を初めて買って食べてみた。外国産に比べて甘さが濃く、もっちりとした食感でおいしかった。9月に入っても全国各地で猛暑日が続く近年。「日本でおいしいバナナを作れる日も近いのでは」と思っていたが、現実はバナナほど甘くない。 耐寒性の苗を販売するD&Tファームは、栽培の難しさという課題の解決に向け、購入者を対象に無償で栽培実習を始めたという。国産がスーパーなどで手軽に買える時代が来ることを願う。(永井陵)
日本農業新聞