鈴木純さんの写真絵本「シロツメクサはともだち」 あなたにはどう見える? 身近な植物、五感を使って目を向けてみて
日本中どこにでも見られる身近な草花、シロツメクサ。四つ葉のクローバーを探したり、花を摘んで花冠を編んだりといった遊びでもおなじみの植物です。『シロツメクサはともだち』(ブロンズ新社)は、そんなシロツメクサの意外な生態を紹介する写真絵本。まち専門の植物ガイドとして活躍する植物観察家・鈴木純さんの初めての絵本です。知っているようで知らない、シロツメクサの本当の姿とは? 【画像】「シロツメクサはともだち」中身はこちら
知っているようで知らない、シロツメクサの生態
―― 絵本の題材としてシロツメクサを選んだのはなぜですか。 シロツメクサって、どこにでもいる植物なんですよね。絵本では、誰でも知っていて、どこでも見つかる植物を取り上げたいと思っていたので、シロツメクサはうってつけでした。 さらにシロツメクサは、よく知られているわりには、実は知られていないことがたくさんあるんですよ。花をよく見ると、小さな花の集合体になっていることや、実ができて、中から種が出てくることなど、大人でも知らない意外な点が多いんです。そんなところが、絵本の題材としてもいいなと思いました。 ―― 鈴木さんが開催している植物観察会でも、シロツメクサをよく取り上げるそうですね。 シロツメクサは多年草で、一年中葉っぱをつけたまま過ごすので、春夏秋冬、いつでも観察できるんですね。だから観察会でも毎回のように取り上げています。 花が咲いていない時期には、クローバーの話。シロツメクサは別名のクローバーと呼ばれることが多いという話や、カタバミとクローバーの葉っぱの比較をしたりします。植物は形を見るということがとても大事で、種類によって形がきちんと定まっているんですね。だから形の違いをなんとなく見分けるのではなく、「カタバミはハート、シロツメクサは丸」と言葉にしておくと、植物を見分けやすくなります。 花が咲いている時期には、花を観察します。まず全体をぱっと見てから、今度はぐーっと近づいて観察してみると、シロツメクサは小さな花の集合体なんだと気づきます。小さな花のひとつをじっくり見ると、ちょうちょみたいな形をしているんですが、これは多くのマメ科の植物に共通の形なんですね。知っていれば実を見なくても、シロツメクサはマメ科だとわかります。 実がなっている時期に観察会があれば、実際に実を手に取って、「ほら、マメだったでしょう?」という話ができます。 ―― 植物観察会での鉄板ネタを絵本にされたわけですね。 そうですね。ただ、絵本作りは僕にとって初めての試みだったので、よく知っているシロツメクサのこととはいえ、絵本にするのは本当に難しかったです。 ―― どんなところに難しさを感じましたか。 植物って静かなんですよね。虫や鳥が相手であれば、飛んだり跳ねたり鳴いたりと、何かしらの動きで向こう側からアピールしてくれるじゃないですか。子ども向けの植物観察会でも、子どもたちはダンゴムシやアリ、テントウムシなどの生き物をすぐに見つけて、気持ちがそっちに向かってしまうんですよね。 でも植物は根っこを下ろしたら移動しないので、向こうから「こっちを見て!」と働きかけてはくれません。動かない相手を題材に、飽きずに見られる絵本にするためには、こちら側から積極的に働きかけるしかない。シロツメクサに働きかけるように読める絵本にしたいけれど、そのためにはどんな展開にしたらいいのか、そこがとても大事だなと思いましたし、苦労した点でもあります。 これまで一般書だと200ページ以上のものを作ってきたので、ページ数だけで考えると32ページの絵本は大したことなく聞こえるんですが、『シロツメクサはともだち』は、今まで僕が手がけた本の中で一番大変でした。