「有事の金」が高騰、1グラム1万5000円突破… 中東緊迫で需要増
国内で取引される金の価格が高騰している。中東情勢の緊迫化を背景に、価値が下がりにくい「有事の金」の需要が高まっているためだ。衆院選での与党の大敗を受け、円安が進んでいることも価格の上昇要因となっている。
大阪市中央区の「ゴールドショップ大阪高島屋店」では、小判やおりんなど、今年1~10月末の金製品の売り上げが前年同期の2・1倍になった。
店員(46)は「高齢者を中心に『子供や孫に残したい』と購入する人が多い。価格上昇により金の価値が再認識されたことで、購入者の裾野も広がっている」と話す。納品が1年待ちの商品があるほか、金の投資経験がない来店客が一度に数千万円単位で買ったケースもあったという。
「安全資産」として金の人気が高まっている。代表的な指標となる田中貴金属工業(東京)の1グラムあたりの店頭小売価格(税込み)は30日、前日比173円高い1万5104円となり、3日連続で過去最高値を更新した。
イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が始まった昨年10月に1万円を突破して以降、上昇基調が続き、約1年で1・5倍に膨らんだ。
武蔵大の茶野努教授(金融論)は、「ロシアによるウクライナ侵略後、中国やインドなどの中央銀行が金を買う動きを強めていたところに中東情勢の不安が重なり、投資家の需要が高まった」と指摘する。
金は通常、国際市場でドル建てで取引されるため、国内の金価格は、為替相場の影響も受ける。衆院選直後の28日の外国為替相場は一時、1ドル=153円88銭まで下落し、約3か月ぶりの円安水準を更新。30日午前も153円台で推移している。楽天証券経済研究所の吉田哲氏は「国内政治が不安定化するとの予想から円安が進み、国内の金価格も上がりやすい状況になっている」とみている。