インド財閥アダニ氏起訴でモディ氏苦境に、緊密関係は「公然の秘密」
(ブルームバーグ): インドのモディ首相は、新興財閥アダニ・グループのゴータム・アダニ会長が贈賄や詐欺の罪で米検察に起訴されたことで、再び浮上した不正疑惑と距離を置くことがいよいよ難しくなってきた。
米検察の起訴が伝わると、インドの野党指導者らは即座にモディ首相とアダニ氏との関係を追及する方針を表明した。アダニ財閥はモディ政権下の10年で一大ビジネス帝国を築いてきた。
モディ氏最大の政敵で、野党・国民会議派を率いるラフル・ガンジー氏は、アダニ氏を逮捕するよう首相に要求。議会でアダニ財閥のビジネスを調査すると述べた。
ガンジー氏は21日、記者団に対し「米国ではアダニ氏が米国とインドの法律を破ったことが極めて明白となり裏付けられた」と指摘。「アダニ氏はなぜ、この国をまだ自由に歩き回っているのだろうか」と疑問を投げかけ、モディ首相との緊密な関係がアダニ氏を汚職疑惑から守っているとの見方を示唆した。
モディ氏は現在、主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するため訪れていたブラジルから帰国の途にある。首相府は現時点でコメントの要請に応じていない。 モディ氏が率いるインド人民党(BJP)の報道官は21日、「疑惑について説明し、自らを弁護するのはアダニ・グループの責任だ。法律は自らの道を歩む」と述べた。
沈黙守る
アダニ・グループを巡っては、米空売り投資家ヒンデンブルグ・リサーチが不正会計・株価操作の疑惑を指摘し、1500億ドル(約23兆1500億円)以上の時価総額が吹き飛ぶなど、同社の株価が急落した経緯がある。
モディ氏とBJPはその際、ほぼ一貫して沈黙を保っていた。しかし、BJPは6月の総選挙で単独過半数を割り込むなど議席を大きく減らしており、勢いに乗る野党勢力が疑惑を巡ってモディ氏への攻勢を強めるのは確実だとアナリストは指摘している。
米ワシントンのウィルソンセンター南アジア研究所のマイケル・クーゲルマン所長は「モディ氏はこれで苦しい立場に置かれる。首相は自身を汚職とは無縁の指導者と位置づけているが、アダニ氏との交友関係は公然の秘密だ」と指摘。「モディ氏にとって最大の課題は野党の攻撃をかわし、清い政治家としてのイメージとアダニ氏との長年の交友関係の間で慎重にバランスを取ることだろう」と述べた。