「なぜ日本人は外国人と友達にならない? 外国語ができないのに外国の友人が増える理由」稲垣えみ子
元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 【写真】この記事の写真をもっと見る * * * 今回のメキシコ旅はホームステイだったので、いつものエアビーを使った旅よりずっと多くの人と話をすることになった。すべての会話が印象深いものだったが、中でもハッとさせられた質問がこれ。 「日本人は、どうして外国人と友達にならないの?」 質問の主は、交換留学で東京に半年住んでいたという30代のイケメン。え、どういうこと? と聞き返すと、東京で仲良くなった日本人と食事に行ったとき、同席した人に「彼はメキシコから来たビジター(訪問者)」と紹介されたのだという。それを聞いた彼は耳を疑った。エ、訪問者? 僕たち友達じゃなかったの?……と。 なるほど傷ついたんですね。ごめんなさい。でもそれはたぶん友達と思ってないという意味ではなく、日本人には「友達」は少しハードルが高い概念なので、心の中で友達だと思っていても、相手がどう思っているかわからないと遠慮することがあるんだよ……とフォローしておきました。
それはさておき、日本人は外国人と友達になれるのかという問いは我が心に響いた。なぜって私のことで言えば、最近急に外国人と友達になることが増えたのだ。かつてはそんな友達など一人もいなかった。だって外国語ができないし外国に行った経験もほとんどないし、となれば知り合うきっかけも話題もゼロ。 そして今も外国語はできない。外国に行った経験も多少増えたとはいえ多いとも言えない。それでも友達ができるのは「話題」があるのだ。 なにも特別なことを話すわけじゃない。お互い自己紹介をするだけ。どんな仕事をしているのか、どんな暮らしをしているのか、何を憂い何を大切にしているのか。それだけで何らかの共通点が見つかる。なぜなら今や世界は互いに密接に繋がっていて、遠く離れた場所で暮らしていても誰もが同じ不安や矛盾に直面しているからだ。 世界のグローバル化にずっと馴染めぬ思いを抱いてきた。でもその苦しみのおかげで国境を越え友達ができている。そんな時代なのである。 稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行 ※AERA 2024年4月15日号
稲垣えみ子