「フリーランス新法」施行で“受注側の地位向上”どこまで現実的? 期待の一方…「格差拡大」の懸念も
フリーランスのこれまでの実状
今回の事案では下請法により、弱い立場にある受託側が守られることになったが、対象がより広範になる新法下で、個人が企業側から不利な契約を持ちかけられた際、受注側が強い態度に出ることは現実的といえるのか。 公取委と厚労省が公表したフリーランスの取引実態の調査結果では、フリーランスの立場が弱いゆえの不公平・不利益が明らかにされている。 具体的には、「事前に契約書を作成するのはまれ。多くは口約束。メール等で文字で証拠を残すことも嫌がる傾向」(映像、編集など)、「先方都合で案件がペンド(延期)となり支払いもされていないものがある」(ライティング、記事執筆業務等)、「業務委託の扱いが直雇用ながら突如報酬の削減、仕事量変わらずで管理は厳しく矛盾している」(教育系)など、発注側のプロ意識に欠けたぞんざいな対応の数々が紹介されている。
新法下での7つの義務と禁止事項
こうした対応はいずれも、フリーランス新法の下では次に示す「7つの義務」としてリストアップされている事項に反する。 (1)書面等による取引条件の明示 (2)報酬支払期日の設定・期日内の支払 (3)禁止行為 (4)募集情報の的確表示 (5)育児介護等と業務の両立に対する配慮 (6)ハラスメント対策に係る体制整備 (7)中途解除等の事前予告・理由開示 「新法における7つの義務は、交渉力や情報収集力の格差を考慮した上で、『できる限り会社と受注側の関係を対等に扱いましょう』といった内容です。ただし、義務の内容は発注事業者や業務委託期間によって異なります。すべてに共通しているのは『(1)書面等による取引条件の明示』です」(辻本弁護士) (3)「禁止行為」にはさらに7つの項目が示されている。 1.受領拒否 2.報酬の減額 3.返品 4.買いたたき 5.購入・利用強制 6.不当な経済上の利益の提供要請 7.不当な給付内容の変更・やり直し 仕事を依頼する側が、 これらを行うことも新法下では違反となる。逆にいえば、これまで、立場の優位さに乗じた、こうした不当な要求がまかり通っていた可能性があるということだ。