日本はインフラや設備は整っているのに、障害者が生きづらい理由。共生のために必要なこととは?【三上大進さん】
社会の「人の心」が生きやすさにつながる
――障害があってもみんなと同じようにできることもあるし、できないと決めつけられてしまうことって、当事者にとっては苦しいことですよね。決めつけをしないで、冷静にできること、できないことをお互い把握していくためには、どんなコミュニケーションが必要だと思いますか。 三上:そこはすごく難しいですよね。日本って、障害のある人にとっては、インフラや設備という「ハード面」では比較的生活がしやすいといわれています。歩道はきれいに舗装されているところが多く、エレベーターも多いので、車椅子や義足の方に取材をしても、海外よりも移動はしやすいと答える方が圧倒的に多い印象です。実際外国に行くと道路がガタガタで、車椅子に対応したタクシーもなく、エレベーターがないところもたくさんある。にもかかわらず、移動に困難をともなう当事者の方たちは「海外の方が暮らしやすい」と言うんです。 三上:その理由を聞いてみると「ソフト面」、つまり目に見えない「人の心」の部分が違うからだといいます。車椅子の自分が段差に困っていたら、自然と周りの人たちが手伝ってくれるし、日本だったら入店が断られるようなお店でも、その場で手の空いているお客さまが手伝ってくれる。移動はしづらいし何かと大変だけど、「生きていく上で自分が排除されない」という意味で、海外のソフト面は進んでいると言う方が多くいらっしゃいます。 生活していて、できること・できないことっていうのは、障害のあるなしにかかわらず健常者の方もあると思うんです。アレルギーがあって、みんなは食べられるものが食べられない、とかもそうですよね。 自分ができないこと、自分が避けなければいけないことを理解した上で、気遣ってくれる方たちに感謝して、自分からお願いできる範囲と、向こうが歩み寄ってくれる範囲が重なるところを見つけていくこと。それには、やっぱりコミュニケーションが必要なのだけれど、こちらからはなかなか言いづらい、相手もどういうふうに受け止めたらいいかわからない、みたいなことが、日本だと多いのかなと思います。お互いに、腹を割って話せないことが多いですよね。
撮影/水野昭子 文/ヒオカ 構成/金澤英恵
三上 大進
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