元広島財界トップが政府の核政策に疑義
広島の財界トップを務め、岸田文雄前首相を支えた男性が、日本政府の核政策や広島市の平和行政に疑義を呈している。核廃絶に向け、被爆者として経済人として「何も出来なかった」との後悔から、来年の被爆80年を前に思いを語り始めた。 【写真】深山英樹さんと岸田文雄前首相 男性は深山英樹さん(83)。3歳の時に広島市で被爆し、兄を失った。広島ガスの社長を務め、2010年から9年間は広島商工会議所会頭を担った。地元財界をまとめ、岸田氏を支えた。 岸田氏には、被爆地選出の首相として核兵器廃絶への積極的な取り組みも期待された。だが、岸田政権は21年に発効した核兵器禁止条約を批准せず、22、23年の締約国会議ではオブザーバー参加も見送った。 「被爆国、被爆地としてこれでいいのか。残念な思いだった」という深山さん。取材に対し、日本政府は核禁条約の締約国会議にオブザーバー参加すべきだと述べた。 また、今年8月には広島市が平和記念式典にロシアなどを招待しない一方、イスラエルを招き、物議を醸した。この問題については「広島市はすべての国と地域を招待すべきだ」と話す。 岸田氏や広島市の松井一実市長に思いを直言することはなかったという。「これまでは言えなかったが、来年は被爆80年。核廃絶のために自分の考えを広く伝えていきたい」(山中由睦)
朝日新聞社