【ライブレポート】須田景凪×ヒトリエ、インターネットからやってきた2組の矜持を示した対バン
須田景凪による自主企画ライブ「須田景凪 presents“MINGLE”」が、11月30日と12月1日に東京・ヒューリックホール東京で行われた。この記事ではヒトリエを迎えて開催された初日公演「合縁」の模様をレポートする。 【画像】ヒトリエ(撮影:藤井拓)(他13件) 「MINGLE」は須田が初めて開催した自主企画ライブ。“交わる”を意味するタイトルを冠したこのライブに、須田は自身が敬愛するアーティストであるヒトリエとなとりを招き、リスペクトを込めたステージを繰り広げた。 ■ ヒトリエ「これだけやりゃあ須田くんも満足だろう」 初日1組目のアクト、ヒトリエのライブは2020年に現体制で初めてリリースされた楽曲「curved edge」で幕開け。ヘヴィなバンドアンサンブルで観客を圧倒したあとも「ジャガーノート」「オン・ザ・フロントライン」と近年の楽曲を連投し、現在のヒトリエのサウンド感を改めて双方のファンに示していく。シノダ(Vo, G)は「須田景凪というとてもさわやかなやつに呼ばれてインターネットからやってまいりました、ヒトリエと申します」と挨拶。しかし「自分で言うのもなんですが、ここにいるやつらのほとんどはインターネットからやってきた人なんじゃないかと(笑)。なんなら須田くんもですが」とオーディエンスや須田との共通点を示して笑いを誘った。 「今日は席があるので、ぶっ壊さない程度に踊っていただければ」というシノダの言葉に続き「ワールズエンド・ダンスホール」のイントロが響くと、客席からは大歓声が起こる。イガラシ(B)が鳴らすパワフルなベースラインに乗せ、観客は楽しそうに体を揺らした。「るらるら」のトリッキーなアンサンブルでオーディエンスを翻弄したあとはシノダがハンドマイクを握り、ゆーまお(Dr)が刻む軽やかなリズムに乗せて「Selfy charm」をポップに歌った。 終盤では11月27日にシングルリリースされた、wowaka作の未発表曲「NOTOK」を披露。シノダは「これだけやりゃあ、須田くんも満足だろうよ(笑)」と充実した表情で語った。そしてオーディエンスの大合唱を煽って「アンノウン・マザーグース」へなだれ込み、ラストは「ステレオジュブナイル」の壮大な音像で締めくくった。 ■ 須田景凪「全然満足していないんでまたやりたい」 この日のオーガナイザー、須田は1曲目に「花に風」を披露。エモーショナルなボーカルで観客の心を惹きつけると「『MINGLE』楽しみにしてました。ようこそ!」と呼びかける。「ユートピア」を疾走感たっぷりに披露したあと、須田は直前のシノダのMCを引用し「俺もインターネットから来ました、須田景凪です!」と挨拶して場内を和ませた。そして前半のヒトリエのライブを「ちょっとよすぎ……カッコよかった」と称え、会場内のさまざまな場所に移動しながら楽しんでいたことをうれしそうに明かした。 「ノマド」で哀切な歌声を届け、「メロウ」を観客と合唱した須田は、続いて「雨とペトラ」「パレイドリア」とギターロックチューンを連投して会場の空気を変える。そして「せっかく特別な夜なので、尊敬するヒトリエの曲をやらせてください。何度もこの曲に救われてきました」という言葉を添え、ヒトリエも直前に披露したばかりの「アンノウン・マザーグース」をカバー。オリジナルとはひと味異なるアレンジを通じ、須田のヒトリエに対するリスペクトを存分に表現した。 最後のMCで須田は「シノダさんは『これだけやれば満足だろう』と言ってましたけど全然満足していないんで、またやりたいです」とヒトリエとの再演に早くも意欲を燃やす。そしてボカロPとしての音楽活動開始から10年を経た自らの道のりを振り返り「カッコいい先輩たちの背中を追ってきて、一緒にやれる日が来るとは思っていませんでした。これからも『やってきてよかった』と思える日をたくさん作っていきたいです。ネットカルチャー出身であること、ヒトリエというカッコいいバンドの後輩であることを誇りに思います」と決意を新たにし、自身の代名詞ともなった代表曲「シャルル」を高らかに歌い上げた。 ■ アンコールで明かされた“大切な先輩”への楽曲 アンコールで須田は、12月11日にバルーン名義でのひさびさの新曲「WOLF」をリリースすることを発表してファンを喜ばせる。しかし真摯な表情でマイクに向かった須田は、この曲に込めた思いを丁寧に語り始めた。「この曲はけっこう前に作った曲で……ここにいる全員が知ってる人、俺にとっても大切な先輩であり、偉大なミュージシャンが、突然いなくなってしまったとき、彼に対して書いた曲です」フロアは息をのんでその言葉に聞き入る。そして須田は今回の対バンにヒトリエを招いたときに「この曲を演奏してくれないか」と依頼したこと、ヒトリエがその願いを受け止めレコーディングに参加したことを話し、オーディエンスを大いにどよめかせた。 須田は「『相応しいタイミングが無かったらリリースしなくてもいいんじゃないか』と思っていたけど、リリースするにはこのタイミングしかないなと。長い間大事にしてきた曲です」と語り、バックバンドのメンバーとともに「WOLF」を初披露した。大切な存在への心情を力強いフレーズでつづったこの曲に、観客はじっくりと聴き入っていた。万感の思いを込めた演奏を終え、須田は「最高の夜でした。また生きて会いましょう」と笑顔を見せ、「MINGLE」初日の幕を閉じた。 ■ セットリスト □ 「須田景凪 presents“MINGLE” DAY1 合縁」2024年11月30日 ヒューリックホール東京 ヒトリエ 01. curved edge 02. ジャガーノート 03. オン・ザ・フロントライン 04. ワールズエンド・ダンスホール 05. るらるら 06. Selfy charm 07. 3分29秒 08. ハイゲイン 09. NOTOK 10. アンノウン・マザーグース 11. ステレオジュブナイル 須田景凪 01. 花に風 02. パメラ 03. ユートピア 04. ノマド 05. メロウ 06. 雨とペトラ 07. パレイドリア 08. アンノウン・マザーグース(オリジナル:ヒトリエ) 09. ダーリン 10. ユーエンミー 11. シャルル <アンコール> 12. WOLF