「ユニリーバなど239社の脱炭素目標を突然削除」に日本企業から困惑の声も
そこで、SBTiでは2021年に「ネットゼロ目標」を策定した。これは、パリ協定で定めた「1.5℃目標」に整合した2050年までの基準だ。 企業がこの基準の認定をSBTiから受けるには、2030年までに(短期目標)スコープ1~3でGHG排出量を半減(スコープ1・2で42%削減+スコープ3で25%削減)し、2050年まで(長期目標)に「実質ゼロ」(スコープ1~3で90%削減)にするなどの目標を提出する必要がある。 SBTiの従来の目標基準では、企業に5~10年先を目標年とした短期的な目標の提出を求めていた。ネットゼロ目標は、従来の目標と比べて、削減施策をより厳格化し、かつ、目標年を2050年まで伸ばした。企業にとっては、自社だけでなく供給網を含め、約30年先までの脱炭素目標を考えることは難しい。
■1000社超が「ネットゼロ目標」に挑んだ
SBTiはネットゼロ目標に賛同する企業を募るため、「ビジネスアンビション(Business Ambition for 1.5℃)」キャンペーンを立ち上げた。広く周知するため、「国連グローバル・コンパクト」、企業/NGOの国際アライアンス「We Mean Business」と組んだ。 このキャンペーンに賛同した企業は、2021年末から2023年末の24カ月以内に、SBTiに目標を提出し、検証を受けることが求められていた。SBTiから認定されなかった場合や期間内に提出できなかった場合は、SBTiのサイト上で「COMMITMENT REMOVED」というステータスで表示される仕組みだった。 今回、239社が一斉に「COMMITMENT REMOVED」になった背景には、こうした事情があった。 SBTiは、目標にコミットはするが、実際に目標を提出しない企業に向けた「圧力」として、2023年8月からこの施策を始めた。これまでは、期間内に目標を提出できなかった企業はサイト上から削除していた。企業にとっては、対外的に「約束を守れなかった企業」として公表されるため、機関投資家などからの評価に影響が及ぶ。 同キャンペーンには500社以上が賛同していたが、今年に入って、239社が一斉に「COMMITMENT REMOVED」に切り替わった。マイクロソフト、P&G、ユニリーバ、ウォルマート、国内企業では、花王やリコー、サントリーなどだ。 今回の「COMMITMENT REMOVED」をどう見るべきか。 オルタナ・オンラインでは、各社の対応やより野心的な目標設定に向けた動きについても報じています。 ■200社以上の「コミットメント削除」は後退でない ■花王やサントリー、長期目標の策定に時間を要する ■リコー「認定を急ぐより、スコープ3の削減を確実に」 ■「さらに野心的な目標が増えることを期待したい」