黒木瞳が泊まるホテルの部屋に「菊の花」を1本持って訪れた武豊
黒木)海外遠征には2頭一緒に行くそうですね? 矢作)1頭だと寂しくなってしまうのです。馬は集団生活する動物なので、(2頭いれば)安心して精神的にも落ち着きます。 黒木)馬同士の相性もよかったのですか? 矢作)どちらも女の子だったので。男の子と女の子だと、少し難しいところもあります。女の子同士だったのでよかったですね。 黒木)お互いの相乗効果で勝ったのですか? 矢作)それは間違いないと思います。どちらが欠けていても、どちらも勝てなかったと思います。 黒木)そのようなこともあるのですね。どの馬を連れて行くかというのもありますよね? 矢作)それは調教師としての計算があります。 黒木)やはり調教師の方はすごいのですね。競馬をテレビで観ていると、優勝したときにスタッフの方たちも含めた写真撮影がありますが、「この方たちは何をなさっているのだろう?」と思っていました。騎手以外の方が何をしているのか、よくわかりませんでした。 矢作)裏方と言えば裏方なのですが、裏方のなかで全体を総括しているのが調教師です。 黒木)矢作さんのプロフィールを拝見すると、中学・高校と超名門の開成に通い、大学には進学せず調教師の道に行くのですよね? 矢作)劣等生だったのです。開成高校では下から数えた方が早い成績しか取れませんでした。 黒木)弁護士か政治家を目指していたと聞きました。 矢作)最初はそうだったのですが、ある意味で挫折したのかなということと、好きなことを一生の職業にしたいと思ったとき、馬や競馬が大好きなので、それを仕事にできたらいいなと思っていました。少し変わっているのですね。人と違うことをやりたいという思いがあった。それがいま、調教師の仕事に活きている部分もあるのかなと思います。 黒木)最初の挫折がいい結果に結びついたのですね。 矢作)そうですね。ツイている人生だと思います。