最低賃金“全国一律”1500円を求め全労連訴え 地域間、男女間格差是正で税収2兆円以上増加
「欧米各国は時給2000円が当たり前の水準」
地域間格差とともに、男女間の格差も深刻だ。 海外と比較すると、男性フルタイム労働者の賃金中央値を100とした場合、女性の賃金中央値は、上位3カ国のノルウェーで95.4、デンマークで95.0、ニュージーランドで93.3となっている。一方、日本は77.9で、平均(88.1)にも達しない下位にあるのが現状だ。(2023年版男女共同参画白書から作成された資料による) 男女間格差の理由として、最低賃金に近い時給で働く人たちの中に女性が多い(※)ことを挙げ、黒澤事務局長は「最低賃金を改善することで、男女の賃金格差も大きく是正される」と続けた。 ※女性労働者の22.51%、女性パート労働者の41.2%が最低賃金に近い時給で勤務している。(労働総研資料による) 会見では最低賃金の国際比較も示された。上位3カ国は、米ワシントン州の2346円、オーストラリアの2223円、イギリスの2102円。日本の1004円は韓国の1103円に次いで低く、欧米の上位国と比べると半分の額にも満たない。(OECD資料による) これについて、黒澤事務局長は「(欧米は)2000円が当たり前という水準になってきている」と見解を示した。
「しっかり福祉として捉えてほしい」
また、会見では、最低賃金を全国一律1500円にした場合の経済波及効果も示された。 全国2823万人の雇用者の時給を1500円に引き上げると、1人あたり月平均4万1400円の賃上げとなり、106.6万人の新たな雇用を創出し、税収(国・地方)は2兆円以上増加する。(労働総研資料による) 最低賃金は、6月25日に開かれる第1回中央最低賃金審議会を皮切りに審議が重ねられ、10月には改定される予定だ。これについて、黒澤事務局長は「40円、50円(上げる)という審議ではなく、100円を超えるような改定がされてほしい」と期待を寄せる。 また、労働者の多くが余裕のない中で生活を送っている現実を示しながら、最後にこう訴えた。「最低賃金は経済政策というより、福祉として捉えてほしい。安定した賃金が図られ、その上に経済がしっかりと発展していくことが目的であり、そうあらねばならない」
榎園哲哉