イタリア旅行で行ってみたい、クルマ好きなら死ぬ前に1度は訪れたい場所をお教えします! 屋上のテストコースは圧巻です【週刊チンクエチェントVol.31】
昔の屋上テストコースは4万本の植物が連なる空中庭園に
そして、La Pista 500だ。ここは最高に素晴らしい。もともとトリノの街やピエモンテの山々を遮るものなしに眺望できて、とても気持ちのいい場所だったのだが、昔の屋上テストコースは今、2万7000平米の面積におよそ300種類、4万本の植物が連なる空中庭園となっているのだ。 昔とはちょっとばかりレイアウトが変わっているけれど、もちろん両側のバンクは残されていて、オーヴァルのコースの内側に沿うようにして遊歩道も整備されている。1周が1.1kmあるしとにかく眺めが素晴らしい上に多種多様な植物が目を楽しませてくれるから、散歩コースとしては抜群。螺旋状のスロープも、もちろん見ることができる。今回はさすがにグルリ1周お散歩というわけにはいかなかったが、おそらく再訪することにはなるだろうし再訪したいのだけど、そのときにはトリノという街の、そしてフィアットという自動車メーカーの今昔に想いを馳せながら、ゆっくり歩きたいと思ってる。 日本でも歴史的な建造物をリノヴェーションして新しい価値を生み出す動きが進んでいるが、昔から旧き佳きモノを大切にするのが当たり前だったイタリアのそれは、さすがに進んでいてひと味違ってる。この旧リンゴット工場跡に行けば、1日をたっぷりいい気分で楽しみながら過ごせてしまう。 しかもフィアットの工場からほとんど道を隔てた向かいのようなところには、日本ではイタリア食材の宝庫としての貌がよく知られてる“EATALY(イータリー)”の第1号店がある。実はこちらも1900年代の初頭にベルモットの酒造メーカーが建てた工場をリノヴェーションして再利用してたりするのだけど、まぁそれはそれ。ここでも、食材探しや施設内での食事でやっぱり1日近くを楽しめてしまう。僕なんて毎回、決まってパスタとパスタソース&ペーストのところで時間が止まっちゃうくらい。こちらも規模が巨大だから、本当に困る。嬉しくなっちゃうくらいに困る。 ちなみにこのフィアットの旧リンゴット工場の建物の一部を再利用したホテルはNHトリノ・リンゴット・コングレスとダブルツリー・バイ・ヒルトン・トリノ・リンゴットとふたつあって、どちらも雰囲気がよく居心地もいい。どちらも決して安くはないけれど、めちゃめちゃ満足感が高い。フィアット好きならなおのこと、だ。 僕のオススメとしては、イタリア旅行に行ったらトリノで1~2泊。前回のヘリテイジハブと旧リンゴット工場、そしてEATALY、さらにはトリノ自動車博物館、旧市街……とゆったり楽しんで来るのがいいと思う。僕自身はこれまで駆け足のような滞在ばかりだから偉そうに言えたもんでもないのだけど。 Casa 500とLa Pista 500は、残念ながら無料の施設ではない。だが、アニェッリ絵画館の入場料に2ユーロを加えた、わずか12ユーロですべての施設に足を踏み入れることができるのはリーズナブルだと思う。
嶋田智之