佐藤そのみ監督作2本の予告解禁、三宅唱・小川紗良ら7名のコメントも到着
佐藤そのみが手がけた中編映画「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」の予告編がYouTubeで解禁。あわせて本作を鑑賞した著名人7名からコメントが到着した。 【動画】「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」の予告編はこちら 宮城県石巻市出身の佐藤が大川地区で撮影した両作。14歳の少女・祐未が主人公の「春をかさねて」は、震災で妹を亡くした女子中学生2人の心の揺れがみずみずしく描かれたフィクション作品だ。ドキュメンタリー「あなたの瞳に話せたら」では、津波で大きな被害を受けた石巻市立大川小学校を舞台に、友人や家族を亡くした子供たちが何を感じ、どのように生きてきたのかが映し出される。 予告編には「春をかさねて」より被災地で暮らす女子中学生たちの会話や、映像作家の小森はるかによるコメントを収録。現在は震災遺構として立ち入り禁止となっている、大川小学校の校舎内でのシーンも確認できる。 映画監督の三宅唱は「もし、今年公開される映画のうち一本しか10年後に持っていけないとしたら、『春をかさねて』を選びます。題材ゆえというよりも、映画としての具体的な探求ぶりに、その真剣な実践に、同じ時代の作り手として、一人の人間として、深く驚き、反省し、刺激を受けました」と語る。文筆家・映像作家・俳優の小川紗良は「切り取られてきたものを、自らの手で『撮り戻す』。その覚悟があまりに強く押し寄せて、私はただ、見つめることしかできなかった」と、作家・クリエイターのいとうせいこうは「あのとき大川小学校の子供たちに何があったかを、何度も語り直すこと、記録すること、伝えること。それがそこで生きる人 の日々の営みなのだと頭を垂れる」とつづった。 「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」は12月7日から27日まで東京のシアター・イメージフォーラムで上映。全国でも順次公開される。なお公開初日には佐藤による舞台挨拶とQ&A、12月10日には小森を迎えたトークが行われるほか、公開期間中には佐藤の大学時代からの友人である「ナミビアの砂漠」の監督・山中瑶子らゲストとのトークも実施予定だ。 ■ いとうせいこう(作家 / クリエイター)コメント 死者に向かっても生者に対しても、鎮魂でないカットはひとつもない映像だ。再構成であれ、ドキュメンタリーであれ。あのとき大川小学校の子供たちに何があったかを、何度も語り直すこと、記録すること、伝えること。それがそこで生きる人の日々の営みなのだと頭を垂れる。 ■ 今村純子(美学・表象文化論 / 立教大学特任教授)コメント たとえ震災のような大変な経験がなくとも、人が生きてゆくというそのことだけでも大変で、そのなかで自分の感受性を正確につかむことは難しく、その感受性が表現に結実していることに驚きました。ただただ「花が花の本性をそのまま開花させる」という、素朴であるのにもっとも難しい表現に触れたと感じました。 ■ 小川紗良(文筆家 / 映像作家 / 俳優)コメント 切り取られてきたものを、自らの手で「撮り戻す」。その覚悟があまりに強く押し寄せて、私はただ、見つめることしかできなかった。自分の無力さを知り、同い年の彼女のまなざしに心から敬意を抱いた。 ■ 永井玲衣(哲学者 / 作家)コメント この作品は、ひとつひとつの言葉がとぎすまされている。たっぷりとした時間と、ていねいな葛藤が、言葉をはりつめさせるのだろう。作品を受け取ったわたしたちにできることは、今も、これからも、もがきながら向きあうひとたちをひとりにしないことなのだろう。 ■ 三浦哲哉(青山学院大学教授 / 映画研究・評論)コメント 他人に撮られてしまうことの違和感は、自分自身が撮ることで消えただろうか。 おそらくそうではないだろう。しかし、違和感からけして目を背けず、違和感を抱きかかえながら撮り切ることで、この真摯で勇敢な制作者は、確実に大きな一歩を踏み出し、これまで誰もスクリーンで見たことのない光景を現出させた。 ■ 三宅唱(映画監督)コメント 心打たれました。つい何度も涙がこぼれ落ちそうになりながら、それを押しとどめられるような凄みがありました(といっても2回目は、冒頭とタイトルとバスと合唱と他いろいろと、ぜんぜん我慢できませんでしたが)。もし、今年公開される映画のうち一本しか10年後に持っていけないとしたら、「春をかさねて」を選びます。題材ゆえというよりも、映画としての具体的な探求ぶりに、その真剣な実践に、同じ時代の作り手として、一人の人間として、深く驚き、反省し、刺激を受けました。 ■ 鷲田清一(せんだいメディアテーク館長)コメント ちぎれ、もつれ、散らばってしまった心はいつか元に戻せるのだろうか? 時がやがてそれを平らにしてくれるのかもしれないが、もっと大事なのはそれを他人と持ちあえるかどうかだと、この二つの映画に教えられた。 (c)SonomiSato