「相続登記」2024年4月から義務化 未申請は10万円以下の過料 空き家対策として期待を寄せる自治体も
2024年度から物価や働き方制度など様々なことが変わったが、その中の一つに「相続登記義務化」がある。街で話を聞いてみると、認知度はイマイチ。決して他人事ではない「相続登記」について深掘りする。 【画像】相続を知った日から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料
10万円以下の過料も
2024年4月から、自宅や土地など不動産を所有する人が亡くなり譲り受ける際、相続した人に名義を変更することが義務化された。 これまでは任意だったが、相続すると「知った日」から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料が課される。これはすでに相続している土地や建物についても同じで、2027年3月末までに登記の申請が必要。
背景に所有者不明の土地が増加
義務化となった背景には、不動産の登記簿で所有者がわからない土地が増えていることがある。 国土交通省の調査では、登記簿上で所有者がわからない土地は約20%にのぼった。所有者が亡くなっている場合は、相続人を探して交渉するが相続人が100人以上になっている場合もあって膨大な時間がかかる。 これによって、公共工事の用地買収が進まなかったり、災害復旧が遅れたり、空き地に家電など大型の廃棄物が大量に放置されているものの所有者がわからないため不法投棄か保管か確認できず自治体でも処分ができないなど、様々な影響が出ている。
義務化に期待を寄せる自治体も
約3700戸の空き家を抱える福島県いわき市。いわき市住まい政策課の大平淳一課長補佐は「炭鉱住宅や港町に残る空き家、そういう部分の空き家について多い傾向にあるのが特徴」と話す。 このうち放置すると倒壊の恐れなどがある危険な空き家は、現在72戸確認されている。 所有者が分からなければ、そのまま放置されるため、特定に向けて調査を進めるが時間と費用がかかる。 また2023年9月の台風でも、浸水した空き家が不衛生な状態で放置されるなど問題は深刻さを増している。 こうした状況からいわき市では、独自にNPO法人と協定を結んで空き家対策を強化。空き家バンクを作って物件の売買を促したり、空き家の管理を代行するサービスを行ったりしている。 危険な空き家が令和元年度は142戸だったが、現在は72戸とこの5年間でほぼ半減していて、相続登記の義務化はこの流れの後押しになると期待している。住まい政策課の大平さんは「管理への意識向上が図られていき、その向上によってより一層空き家の流通に関しても促進されて、管理不全な空き家の減少にもつながっていくものと考える」と話した。