映画の撮影なのに「人数少なくない?」…『侍タイムスリッパー』ヒロイン役・沙倉ゆうのさん、殺陣師役・峰蘭太郎さんが語る舞台裏
こだわりぬく監督と共に
――安田監督は普段は農家をされていることが今作の裏話として方々で語られています。エックスでは「幼稚園の稲刈りのお手伝いです」というポストも見かけました。 峰いつの間にか、こっちも監督がお米作ってる人だってことを忘れてしまう。元から「活動屋」。ずっと「活動屋」やったんと違うんかなと感じたんです。 沙倉(三作、安田監督と作ってきて)ずっとです。監督は自分のこだわりが明確にあるんです。自分の頭の中に絶対したいっていうのがある人やから、どれだけ時間がかかっても最後までやり遂げる。それに比べて私はのんびりしているので付いて行けるのかも(笑)。 峰いい関係ですよね。沙倉ちゃんがこういう性格で魅力のある子なので、いい空気でやれるんちゃうかな? 沙倉いい空気かなぁ、撮影中はピリピリしてますよ(笑)。 峰これ言うていいんかわからへんけど、カメラ横で聞いてたら、沙倉ちゃん監督にタメ口で喋ってたよ。助監督が監督にね。でもそれでも監督は普通に会話してたから。監督も熱中してはるんやなあ(笑)。
お客さんが見ているところ
沙倉さんが安田監督と長編映画を作るのは本作で3度目。制作に対するこだわりが強い安田監督だが、特に前作『ごはん』では撮影終了後も7年以上にわたり追撮が行われ、沙倉さんはずっとその撮影に参加し続けている。クランクインから11年目だった昨年も追撮が行われた。 沙倉『侍タイムスリッパー』に関しては、これ以上の追撮はないと思うんですけど…結構あるんですよ、間違っているところが。でもおかげさまで(お客さんに愛される)みんなの映画になっているので、「もう修正できへん」って監督が言ってました(笑)。 峰どこのシーンとは言わないですけどね、日中のシーンやから「デイシーン」って言うんですけどね、監督が朝からすごく集中していて終わったのが夜。ナイトや。僕もそのシーンに出ているのに、完成した映画を見てもそのシーンだと気がつかなかった。しかも、お客さんも、僕らの仲間が見ても誰も「あれおかしいんちゃう?」っていう人がいないんです。本当は画の繋がりとかリアルじゃないといけないのかもしれないけれど、それだけじゃなくて、もっと大事なものがきっとあるんやろうな。この仕事が長いと「撮影はこうするべき」と思うけど、もっと大事なものがあって、お客さんはそこを見てはるんやろうなっていうのを改めて感じました。 ――沙倉さんはこの映画の前に二作品、安田監督とインディーズで作ってこられた。今回は東映の撮影所を使用したり、峰さんはじめメジャー作品に関わっている俳優さんやスタッフさんとチームを組んだわけで、異文化交流のみたいな部分もあったと思いますが、沙倉さん的に「これをどう収拾つけよう」ということはありましたか? 沙倉そればっかりです(笑)。監督の撮影スタイルは前から知っていたので、私からすればいつものこと。でも他の俳優さんたちはそうじゃないですし、今回はスタッフも初めての方が多かった。例えば画が繋がっているかとかはスクリプターさんがちゃんと見てくれてはるけれど、監督は今まで撮影も編集も全部一人でやってきたからそんな役回りの人がいないわけです。そうすると、俳優さんたちからは「大丈夫ですか?」「今の繋がりますか?」と、すごく心配されてしまいました。 峰最初、映画の撮影だと思ってきたらスタッフが10人もいなかった(笑)。「人数少なくない?」って(笑)。それで照明さんは撮影所のスタッフが来てくれはったのに、監督は自分でカメラのぞいて、勝手に自分で照明いじっちゃうしね(笑)。 沙倉ちょうどこの道場のシーンです。室内だから人数が最小限だったんですよ(笑)。 峰でもね、やっぱりそこまでの拘りやスタイルがなかったら、この映画はこうはなってなかったと思いますよ。みんなに「まだ撮るんですか?」って言われながらもね。途中で諦めてたら、安田さんの映画にならなかったでしょう。みんながこの台本を愛したからから。僕も最初から「なんて素敵な台本や」と思ったしね。 みんながこの映画に惚れちゃった。だからこうやって完成したんでしょうね。