湖を泳いで渡る自転車レースにはシュノーケルが必要!?|竹下佳映のグラベルの世界
湖を泳いで渡る自転車レースにはシュノーケルが必要!?|竹下佳映のグラベルの世界
2020年と2021年、新型コロナウイルスによるパンデミック中にアメリカでのグラベルレースもフォーマットを変えて開催された。DIY(=Do It Yourself、自分でやる)になったレースも多かった。そのなかでももっともインパクトのある大会といえば「ザ・クラッシャーEX」だろう。約400㎞を30時間以上で走るのに、サポートなし、自己責任で走るという。今回は持ち物には「シュノーケル」が必要だという日本では考えられないアドベンチャーなグラベルレースを、北米で活動するグラベル界の第一人者竹下佳映さんが紹介する。
『ザ・クラッシャーEX』~エンハンスト・グラベル~
2020年と2021年のパンデミック中にフォーマットを変えて開催されたこの大会に2連続で参加しました。今回は2020年に参加したときのストーリーです。グラベルと出会ってもう8年が過ぎようとしていますが、アドベンチャー度で言うと、このザ・クラッシャーEXに勝るものは私は個人的にはまだ経験していません。
北の地、ミシガン州アッパー半島、Upper Peninsula、略してUP
カナダ国境に面し豪雪地帯である、ミシガン州の三分の一を占める面積をもつアッパー半島(以下UP)は、州人口のたった3%しか住んでいない、大自然に溢れる場所です。UP最大の市(2万人強)であるマーケットの緯度は北緯46度32分47秒、半島北端の市のコッパー・ハーバーは北緯47度28分8秒、半島の北に浮かぶ島々で構成されたアイル・ロイヤル国立公園の位置は北緯48度6分0秒になります。北海道宗谷岬にある日本最北端の地の碑が北緯45度31分22秒ですので、UPがどれほど北に位置しているのかがわかると思います。 例年どおりならば、コッパー・ハーバーからマーケットまでの約400kmのレースだったのですが、パンデミックの影響で2020年にフォーマットが大きく変わりました。 大人数での集会になるのを避けるため、開催日は予定していた特定日ではなく、7月頭から9月末までの3カ月間に変更。 事前にメールで届く「パスポート」と呼ばれる資料とGPSコースファイルに基づき、登録者それぞれが行いたい日時に出発し、制限時間以内に完走するというこのフォーマットは「EX」と呼ばれ、一番速いタイムの完走者だけを称えるのではなく、完走者全員を表彰するというものになりました。パンデミックで特に2020年にはほぼ全てがキャンセルされているなか、この「少人数グループでの冒険」が爆発的な人気になり、参加者の数はいつもの年より多くなりました。