マツダ「ロードスター RF RS」、900km試乗し大改良を再検証…ハードトップ×6速マニュアルの「人馬一体」が進化
■ 「重たい」ハードトップモデルの走りが一変 試乗した車両のサイズは、全長3915mm×全幅1735mm×全高1245mm、ホイールベースは2310mm。 エンジンは、排気量1997ccの直列4気筒。最高出力は184ps(135kW)、最大トルクは20.9kgf・m(205Nm)。 トランスミッションは6速マニュアルで、タイヤは205/45R17を履く。 ロードスターといえば、「軽さ」が命であり、マツダは「グラム戦略」と銘打って部品の細部にこだわって軽量化を進めてきた。 齋藤氏は最新NDに対して「サスペンションの稼働範囲が大きく、コーナーをひらひらと舞うように走れる」という走りのイメージを示す。 それが、RFとなると、走りのイメージは少し変わる。ハードトップの電動開閉装置の重量が加わるため、ソフトトップ車に比べて重量がかさんでしまうのは致し方ない。そのため、海外仕様のソフトトップ車で採用している2Lエンジンを搭載して、パワーアップを図っているのだ。国内仕様のソフトトップは1.5Lエンジンを採用する。 そんなRFは、どっしりとした乗り味であり、全体的な印象としては「やや重い」とか「クルマの動きがゆったりして穏やか」という印象があった。 それが、昨年の大幅な商品改良によって、RFの走りは一変した。特にスポーティなRSグレードでは、モータースポーツで例えるならば「決勝レースで安定してハイペースで走れて、前車を追い抜く際にもクルマの動きの自由度が広い」と表現できるのではないだろうか。
■ 新開発「アンシンメトリックLSD」の効果を実感 乗り心地については、ロードスター(ソフトトップ車)の16インチタイヤと比べると、RF RSが装着する17インチは多少硬さを感じる。それでも、路面からの突き上げに「角(かど)がない」ため、長距離移動でもあまり苦にならなかった。 最も気に入ったのが、ブレーキングの際のクルマの姿勢だ。交差点での低速走行時でも、山間のワインディングでも、クルマがターンインする際に、クルマの姿勢が「ピタッ」と決まる。 そこから、コーナーリングへ実に自然に導かれるようにRF RSが動くのだ。 コーナーリング中も、クルマの重さを感じるようなネガティブなイメージでのロール量は大きくなく、クルマ全体の動きが実に粘り強い印象を受ける。 そのため、コーナーリング中からターンアウトにかけて、ハンドル操作に微修正が少なく、まさに「人馬一体」を実感できるのだ。 こうした一連のクルマの動きは、新開発の「アシンメトリックLSD」の効果が大きい。 加速・減速時のデファレンシャルギアの差動制動力を変化させ、後輪の設置荷重を上手くコントロールする仕組みだ。 また、電子アーキテクチャの新設によって、アクセルに対するエンジン制御をより細かくコントロールすることができており、これも「人馬一体」感が増す要因だ。 今回の商品改良前まで、ロードスターRFは大人がゆったり乗るクルマで、どちらかといえばオートマティックトランスミッションが似合うクルマというイメージがあった。 それが、RSというスポーティグレードで、しかも6速マニュアルトランスミッションにより、実に楽しく躍動感がさらに高まる仕様へと変貌したと言える。 さらに、待望のマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC) が採用されたことで、長距離の高速道路移動での疲れをかなり軽減できたことで、走り全体がさらに楽しく感じた。 RF RSの新車小売価格は約430万円。ソフトトップの標準モデルが200万円代後半から買えるロードスターの中では最上級モデルとなるが、ロードスターの真骨頂が味わえる逸品だ。 桃田 健史(ももた・けんじ) 日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。 ◎Wikipedia
桃田 健史