マネスキン伝説を今こそ総括 大熱狂を巻き起こす4人の革新性、日本との特別な絆
2度目の来日までに果たしたスケールアップ
そして次に日本にやって来るまでの1年半も、彼らにとって重要なステップアップの時期となる。晴れて第65回グラミー賞の新人賞にノミネートされたマネスキンは、2023年1月に待望の3rdアルバム『RUSH!』を発表。前述したマックスのほかにもアメリカや北欧のヒットメイカーたちの手を借り、4人それぞれに異なる嗜好を積極的に反映させてサウンド表現に幅を持たせた同作はヨーロッパ各国のチャートでナンバーワンに輝き、英国で最高5位を獲得したほかアメリカでもトップ20入りを達成。 その後のツアーではグラストンベリー・フェスティバルに初出演して、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンのステージに立ち、イタリアでは巨大スタジアムで凱旋公演を行なうなど各地で大舞台を踏み、12月にいよいよ東京と兵庫での計4回のアリーナ公演を売り切るジャパン・ツアーを、みごと成功させるに至ったわけだ。 このうち、12月3日の東京・有明アリーナ公演の模様をフルに収めたアルバム『LIVE IN JAPAN - RUSH! WORLD TOUR -』が、サマーソニックを控えたこのタイミングで日本限定で発売された。 “マネスキン合唱の手引き”なるブックレットも添えられていることから、予習には最適のライブ盤と言える。 初の単独ツアーにして1万5千人を収容するアリーナを夜な夜な一杯にした彼らはちなみに、映像などによる演出に頼らず、サポート・メンバーを加えることもせず、4人だけ、音楽だけで2時間にわたってオーディエンスと向き合うことを選んだ。それは、ライブ映えを意識して作ったという『RUSH!』への自信の表れなのか? 実際インダストリアル・ロックからパワーバラードまで実に多様な、伸びしろがたっぷりある曲を同作で用意した彼らは、まさに4つ首のモンスターと表すべきスリリングなパフォーマンスで広大な会場を揺らし、「TRASTEVERE」と「TIMEZONE」のアコースティック・セクション然り、「I WANNA BE YOUR SLAVE」から「KOOL KIDS」までアップビートな曲で走り切るクライマックス然り、どこを切っても濃密な音楽体験を分かち合ってくれたものだ。 このジャパン・ツアーは同時に、年季の入ったロックファンだと思われる人々からドレスアップした若い女性のグループまで老若幅広い層のオーディエンスを動員し、マネスキンの音楽がいかに短期間に、日本に深く広く浸透したかを如実に物語ってもいた。洋楽離れが進む中、近年これほどの規模とスピードで海外の新人バンドが成功を収めた例はほかに思い付かないし、過去2度の来日で築いた絆あってこそ、今回たった8カ月のインターバルで日本に帰ってきてくれるのだろう。我々だけではなく、彼らにも前回のパフォーマンスの記憶が残っていることは間違いなく、それをさらに鮮烈な記憶で更新し、次につなげられるよう願いたいところだ。 また今回の来日に関しては、マネスキンの公演前夜に開催されるソニックマニアに、ヴィクトリアがDJとして出演するというサプライズもある。昨年一番聴いた作品としてミス・バッシュフル×DBBDによるダーティー極まりないミニマル・テクノEP『Hot European Summer』(メキシコ系アメリカ人シンガー兼ラッパーとドイツ人プロデューサーによるコラボ作品)を挙げていた彼女は、ダンス・ミュージックへの造詣も深く、さる3月から5月にかけて、マイアミからイスタンブールまで20の都市のクラブでプレイする初のDJツアーを敢行したばかり。短いセットではあるが、東京でも手腕を披露してくれるのである。そんな別の顔を持つベーシストが、片や70年代のカシオペアのアルバムをヘビロテしているドラマーとリズム・セクションを構成しているのだから、マネスキンというバンドが面白くないわけがない。そして、今後何を仕出かすかも分からない。 この投稿をInstagramで見る ΛSTRΛL ПIGHTS(@astralnights_)がシェアした投稿 --- マネスキン 『LIVE IN JAPAN - RUSH! WORLD TOUR -』 発売中 ※CDのみでのリリース SUMMER SONIC 2024 2024年8⽉17⽇(⼟)18⽇(⽇) 東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ ⼤阪会場:万博記念公園 ※マネスキンは8⽉17⽇(⼟)東京会場、18⽇(⽇)大阪会場に出演 SONICMANIA 8月16日(金)幕張メッセ 開場:19:00/開演:20:30 ※VICTORIA(MÅNESKIN)が0:10~PACIFIC STAGE出演
Hiroko Shintani