「幸福度全国1位」の村で、村民に「幸せですか?」と聞いてみた
賃貸住宅建設大手の大東建託(東京)が全国47都道府県を対象に、住人がどのくらい幸福に思っているかを調査した2023年の「街の幸福度」ランキングで、長野県原村が全国1位となった。村民は実際に幸せなのか、理由は何だろう―。村を訪ね、村民に「幸せですか?」と聞いた。(徳永みなみ) 【写真】原村の風景が分かる航空写真
魅力は豊かな自然、静かな住環境、人の優しさ
調査はインターネット調査会社の登録者を対象に19年に開始。累計で50人以上の回答が得られた自治体を集計対象とした。原村は回答数が集まらず22年までは対象外だったが、23年は50人以上の回答が集まった1369自治体中1位。 14日、記者が最初に訪ねたのは子ども・子育て支援センター「はらっぱ」。1歳3カ月の長男と遊んでいた主婦(31)に尋ねると「あ、はい。幸せです」。自身の幸せ度合いを10段階中9とし、「(周りの人が)子育てを温かく見守ってくれるから」と話した。 村役場に来たアルバイト従業員の男性(72)は「自然の中でゆったり暮らせている」として幸せ度合いを8に。自然を求めて30年前に千葉市から家族で移住したといい「寒さは厳しいが、それだけ空気もきれい」と満足そうだった。 他にも役場とその周辺で聞いたところ、計10人の幸せ度合いの平均は8だった。理由の多くは豊かな自然や静かな住環境、人の優しさ。子育て世代では18歳の3月末までの医療費無料を挙げる人も目立った。 だが、それなら他に当てはまる自治体もある。本当の要因は何だろう。村田舎暮らし推進係によると、村の見学会などを経た移住者は08年度から毎年20人前後で推移。清水大史係長は「自然を求めて関東圏から来る人が多い印象」と話す。ランキングの調査企画や分析をした麗沢大(千葉県柏市)の宗健教授(都市計画)は「(原村には)もともと幸福度が高い富裕層の移住者が多い」と分析する。幸せな人の特徴は家族の仲の良さや住まいの満足度など。経済的な余裕は住まいの充実につながる―とする。 一方で、幸福度については「行政の関与が難しい」と指摘。首都圏から富裕層を連れてくればいい―となりかねず、幸せの感じ方は個人によってまちまちだ。みるべきは同様に大東建託の「街の住みここち」調査だと指摘する。
買い物や交通の不便さはある 「住みここち」は全国17位
村の利便性については注文の声も多かった。村保育園に年少の長男(4)を迎えに来た男性(36)は「街灯が少なく、夜は暗い。スーパーも少ない」。村内にはスーパーが2店のみで、子育て世代を中心に4人が少なさを指摘した。 公共交通の利便性はどうだろう。お年寄りを中心に「運転できなくなった時が心配」と話す人が目立った。村は今月から乗り合いデマンド型公共交通「のらざあ」の本格運行を始めており、注視しているという人もいた。 23年の「街の住みここち」調査で村は全国版で17位、甲信越版で1位にランクインした。宗教授は「生活の利便性を上げる方がいい。まちづくりの材料にしてほしい」としている。