1890年創業の老舗店で “今”の郷土料理を表現 「オー・リヨネ」
美食の街パリを支えるのは、ビストロからガストロノミーレストランまで様々な舞台で創造に心を砕く料理人たち。持続可能な食の未来を考え、素材と対峙する。 【画像】リヨンの郷土料理“川カマスのクネル”。オマールのソースで。 ゲストの顔がほころび会話も弾むような、美食の食卓へと出かけよう。パリで注目のシェフ&レストランを6回に渡りご紹介。
パリを舞台に新たな境地へと昇華するリヨン伝統の味
◆Aux Lyonnais(オー・リヨネ) リヨンではビストロのことを“ブション”と呼ぶ。19世紀まで遡る歴史を誇るパリの老舗「オー・リヨネ」を、フランス料理界の王様アラン・デュカス氏が傘下に置いたのは2002年のこと。 その後も厨房の火は絶えることなく、本場のブションで供される本格的な郷土料理を楽しめる店として愛されてきた。 「オー・リヨネ」とは、“リヨン地方で”という意味。そのシェフに昨夏に抜擢されたのがヴィクトリア・ボレールさん。 期せずしてリヨン生まれだ。リヨン北郊のワインの郷ボージョレーで育ち、大地の力で感性が培われてきたと感じている。 「この厨房に立つのは私の使命」と語るシェフ。リヨン料理のイメージは得てして、ずっしりと重い。それを高級レストランで磨いた技術、知識を十二分に取り入れて、軽やかかつ華やかに仕上げたいと腕を振るう。 たとえば、リヨンを代表する一皿“クネル”。懇意にする漁師から川カマスをまるまる仕入れて、自ら捌いてツミレにする。 伝統ではナンチュア・ソースというザリガニの殻を煮出したソースで供するが、オマールを使用して、より上質な味わいへと昇華させる。 鳩料理でも添えるソースには、真空調理で味わいを閉じ込めたアジャン産プラムを使い、フレッシュな酸味を添える。 さらに、パリならではといえる、そんな洗練された郷土料理に花を添えるのが、古物商巡りを愛するアラン・デュカス氏自ら蒐集した小皿やグラス、水差しなど。新旧が見事に融合した美食の世界が繰り広げられている。 Victoria BOLLER(ヴィクトリア・ボレール) 1992年生まれ。ミシュラン3ツ星「メゾン・マルコン」のレジス・マルコン氏、「ホテル・ネグレスコ」料理長でMOF(国家最優秀職人章)保持者ヴィルジニ・ヴァスロ氏らに師事した後、パリへ。アラン・デュカス氏に見出され昨年7月より現職。 Aux Lyonnais(オー・リヨネ) 所在地 32 rue Saint-Marc 75002 Paris 電話番号 01 42 96 65 04 営業時間 12:00~14:15、19:00~22:30 定休日 月・火曜、日曜のディナー ※日曜はブランチメニューを提供
乗松美奈子