日ロ首脳会談に想う――「ニコライ堂」に見るロシアとのつきあい方
トランプ氏の勝利は、日本がアメリカの傘の下から這い出て独自の外交(独自の防衛ではない)を展開するチャンスでもあるが、ピンチでもある。これまでの歴史を見ても、極東の島国が虚々実々の外交駆け引きに長けているとは思えない。今、この国は、軍事大国や経済大国といった虚栄の優越意識を捨てて、本格的な現実外交に乗り出す「正念場」なのだ。 一艘の小舟に大海の波は荒い。 日本とロシアの総合的な関係強化には、西欧と東欧、ビザンチンとイスラム、日本や中国といった漢字文化圏との関係などに対する広く深い理解が必要だろう。地政学的な対立関係を超えて「文化様式分布論」的な友好関係を目指すべきである。これまでのようにヨーロッパやアメリカの基準に偏ったのではない、客観的で普遍的な視点から世界と歴史を理解するコンパスが必要だ。 ちなみに、かのジョサイア・コンドルは、ニコライ堂の実施設計を担当している。建築界では基本設計を重視するので「ニコライ堂はコンドルが設計した」とするのは必ずしも正しくない。しかしコンドルの弟子である辰野金吾が設計した東京駅のドームに、コンドルをつうじたビザンチンの風を感じるのはまちがっていないと思われる。 明治以来、日本は、東欧とは異なる意味で、西洋と東洋の中間にあり、二つの文化の関係を見直す価値は小さくない。 そうなればニコライの鐘も、また異なった音色で響くだろう。 聴いてみたいものだ。 安倍首相は、日露首脳会談のあと、返す刀で、オバマ大統領とともに真珠湾を慰霊訪問するという。トランプ次期大統領との会談も含め、この行動力は評価したい。